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副反応は?ワクチンの意義は?専門家に聞く

2021年4月18日 3:15
副反応は?ワクチンの意義は?専門家に聞く

新型コロナウイルスの政府の政策決定やワクチン開発、医療現場などの最前線で奔走する専門家たちに、今更聞けない素朴なギモンから最新情報のアップデートまで聞く企画。第7回は、新型コロナワクチンの副反応を評価する国の専門家会議で部会長を務める東京医科歯科大学の森尾友宏教授を取材した。

■副反応は「女性」「若年層」に多い傾向

(Q:医療従事者への先行接種で明らかになるデータや事例を評価してこられて、副反応の特徴は?)

傾向としては、女性に副反応が多い、そして若年者で副反応が出ていると思います。

(Q:副反応として特に多いものは?)

もちろん局所の疼痛(痛み)、発赤もありますが、全身倦怠(けんたい)感(だるさ)が多くて、発熱をする方もいます。やはり比較的しっかり副反応が出る、反応が出る予防接種だと思います。

■高齢者の接種開始…高齢者の副反応は?

(Q:高齢者の副反応の傾向は?)

まだ、症例数が少ないので確定的なこと言えませんが、高齢者の方が頭痛とか発熱、全身倦怠感の副反応の数が(若年層の)半分くらいかなと思います。

一方で、やはり高齢者の方は体力が弱っている方もいらっしゃると思うので、発熱とか全身倦怠感が出た時の対応は、しっかり考える必要があると考えています。

(Q:医療従事者と、高齢者の接種では注意点は変わる?)

基本的には予防接種にあたり注意が必要な方という意味では同じだと思います。ただ、高齢者の方だと基礎疾患を持つ方が多いと思います。これは(接種にあたり)注意が必要な方にあたり、例えば、心臓の病気とか腎臓の病気とかの方が(高齢者には)多いと思います。

逆に、そういう方々は新型コロナウイルスに感染すると重症化するため、優先接種の対象にも入ります。高齢者で基礎疾患がある方で体調がいい方は、積極的に受けていただくメリットが高いと感じています。

■接種で大事な「予診票」

(Q:高齢で基礎疾患のある方は、自分が接種してよいか迷う場合もあるが、どうすれば?)

まず、ご自身の病気(持病)と、どういう治療を受けているかを把握する必要があって、これを予診票に書く欄があります。また「今日の予防接種を受けていいと医師に言われましたか」という欄があります。予診票を書く時に迷うことがあれば、かかりつけ医、あるいはその病気の主治医に相談するといいと思います。

基礎疾患のある方は、定期的に通院していると思うので、その時に相談することが重要だと思います。一般論でいうと、基礎疾患が悪化しているとか、全身の状態が悪い時に、無理に接種することは考えない方がいいと思います。少しよくなってから受ける、というスタンスを常に考える必要があると思います。

■アレルギーがある人は“注意しながら”接種が可能

(Q:何らかのアレルギーがあり、接種していいか迷う場合は?)

ぜんそくや食物アレルギーがある方も、ワクチンを受けられないということは全くないです。これは言い方が難しいですが、アレルギーのある方も、予防接種を受けられると思っていただいていいと思います。ただ、注意をして受けていただきたい。予診票にしっかりそのことを記載していただくことが重要だと思います。

一方、明らかにこれまでに、ワクチン、またはワクチンに含まれる成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方は、接種が難しいと思うので、これはやはり医師の判断を仰いでいただきたいと思います。

■接種日の心構え、会場には「お薬手帳」持参を

(Q:接種日のコンディションについては)

前日は、ぜひ過労は避けてよくお休みいただくのがいいと思います。当日は、体調不良かなという状態でお越しいただくのは望ましい状況ではないです。

(Q:会場に持って行くべきものは?)

まずは、予診票にしっかり書き込んでいただくことが大切だと思います。加えて、できれば「お薬手帳」も持参いただいて、こんな薬を飲んでいますとご提示いただくといいと思います。

■接種会場ではリラックスを

(Q:アナフィラキシーなどへの対応はどこでも大丈夫?)

各自治体でかなり今まで努力されて、いわゆる特設会場での接種体制を整えてこられてきたと私は理解しています。そういう意味で、例えばアナフィラキシーへの対応、何かあった時の搬送体制は、確立はされていると思いますので、集団接種の会場選びに関して、躊躇(ちゅうちょ)される必要はないと思います。

当日(急性の反応で起こるのは)主にアナフィラキシーと血管迷走神経反射です。これらは、会場にとどまっていればしっかり会場の医師、医療スタッフが対応できると思うので、不安は感じなくて大丈夫だと思います。

(不安などが要因の立ちくらみといった)血管迷走神経反射で、接種前に調子が悪くなる方もいますので、ぜひリラックスして接種会場にお越しいただきたいなと思います。

(Q:接種後の腕の「痛み」は)

痛みは、基本的には翌日、翌々日にくると思っていただいて、使用できるのであれば鎮痛薬を使っていただくのを躊躇(ちゅうちょ)しなくてもいいと思います。

■副反応は、回復する

(Q:これまでの先行接種で、アナフィラキシーとなったあと体調をずっと崩している人はいるのか?)

今までの110万人(2021年4月時点)の接種の中で、350件がアナフィラキシー疑いで報告が上がってきています。その中でアナフィラキシー(と評価されたの)は79件です。報告のあった350件の中で349件は、完全に回復されています。残りの1件も、いわゆるアレルギー症状は回復していると聞いています。

アナフィラキシーへの対応は、各施設で今まで非常に適切に対処してきていると思います。

■高齢者がより自由な生活へ…ワクチンの意義とは

(Q:高齢者のワクチン接種は、感染リスクを考えれば意義がある?)

おっしゃるとおりだと思います。高齢者は、新型コロナウイルスに感染すると重症化する率が高いことで知られています。重症化するだけでなくて、高齢者が感染すると不幸にして亡くなることも明らかに多いですので、プロテクトはすごく重要だと思っています。

あと、やはり高齢者の方は、施設で面会ができないといった行動制限や、お家にいらっしゃる方でも、ご親族やお孫さんに会えない方もいらっしゃるかと思いますが、そういう今の生活を少し変えて、より自由な生活へ、という方向性においても、やはり今回のワクチンに期待するところは大きいと感じています。

■プロフィール
森尾友宏東京医科歯科大学副学長・副理事(国際交流・情報担当)
発生発達病態学分野(小児科)教授
新型コロナワクチン接種の「予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」部会長