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再拡大警戒も新たな旅行支援策 懸念の声も

2021年3月26日 19:37
再拡大警戒も新たな旅行支援策 懸念の声も

新型コロナウイルスへの感染が急拡大している地域がある一方で、比較的感染が落ち着いている地域を対象に、国が新たな観光支援策を打ち出しました。地方経済からは期待される一方で、感染拡大の要因になるとの懸念の声も上がっています。

■立ち話でも…東京じわじわ感染拡大
26日、東京では新たに376人の新型コロナウイルスへの感染が確認されました。直近7日間の感染者数の平均を前の週と比較してみると、今月初旬から100%を超え、じわじわと感染が拡大しているのが分かります。

東京都では、80代の女性が高齢者が集まった『カラオケ』で感染しました。ほかにも、いわゆる『昼カラ』の店の従業員2人(80代・50代)の感染も確認されています。また、集合住宅で隣人と『立ち話』をしていて感染したケースもありました。この時にマスクを外していたかどうかは分かっていませんが、普段の何気ない生活でも感染が起こりうることが分かります。

■地方でも急速に感染拡大 変異ウイルスも
感染は首都圏だけでなく、地方でも急速に広がっています。例えば愛媛県では25日、過去最多の59人の感染が確認されました。このうち47人が、松山市内の接待を伴う飲食店やバーで発生した『繁華街クラスター』の関係者でした。このクラスターは、この47人を合わせて25日までに93人確認されていて、その内、県が21人に検査したところ、20人が変異ウイルスと判明しました。

変異ウイルスの広がりは千葉でも確認されています。特徴的だったのは、変異ウイルスの型が特定できた20人のうち18人が「ブラジル型」だったことです。この18人のうち10人がカラオケのクラスターで、うち1人(80代女性)が21日に死亡しています。これまで国内の変異ウイルスの多くはイギリス型でしたが、ブラジル型も広がりつつあるのが分かります。

■再拡大警戒の中、経済活性化へ新たな支援
リバウンドへの警戒が高まる中、国は経済活性化に向けて新たな支援策を始めようとしています。赤羽国土交通大臣は26日、感染が落ち着いている都道府県を対象に、県内での旅行について財政支援を行うと発表しました。対象は、感染状況などが「ステージ2」相当以下の都道府県で、県が県内での旅行割引などを行う場合です。

1人1泊あたり旅行代金の50%が上限で、最大5000円を国が支援します。例えば、1泊8000円のホテルに宿泊した場合は、半額の4000円が支援されます。1泊2万円のホテルに泊まった場合は上限の5000円を支援します。ほかにも、土産物店などで使えるクーポン券なども合わせて実施する場合は、さらに上乗せして1人1泊あたり2000円を上限に支援します。

似たような施策としては『GoToトラベル』がありますが、『GoToトラベル』は全国規模で行うことが原則であるところ、まだ全国的に再開できる状況ではないことから、一時的な措置として地域限定の支援策を打ち出した形です。

すでに27の県で独自の宿泊割引などの観光支援が行われていますが、知事が手を上げれば、そうした県独自の取り組みに対して国が財政支援を行うというのが今回の趣旨です。

感染が落ち着きつつある群馬県では、26日から県民を対象にしたキャンペーンを始めました。群馬県民が1人1泊6000円(税抜)以上の県内の施設に宿泊した場合、5000円が割引かれます。県の担当者は、国の財政支援を「利用できるなら利用したい」と話していました。

静岡県では今月8日から、県民が県内の施設に宿泊した場合に1人1泊最大5000円を割引する支援を行っています。国の支援について担当者は、「26日に発表があったばかりで情報収集中だが、支援があることは県内観光振興のためにはありがたい」と話していました。

熊本県でも16日から、県民が同居人と県内旅行をする場合、あるいは日常接している4人以下で県内旅行をする場合に1人1泊最大5000円を割引する宿泊料の割引支援をしています。国の財政支援については「財源手当をいただけるのはありがたい」と話していました。

■専門家、支援策に「時期尚早」
一方、今回の支援策について、感染症の専門家からは懸念の声が上がっています。

国際医療福祉大学成田病院の松本哲哉主任教授は「今は感染が落ち着いている地域でも、いつ突然、拡大するかはわからない。そんな状況で、人の動きを活発化させるような対策は時期尚早。その場しのぎの支援策は、長期的に見れば経済にもダメージになる可能性がある」と指摘し、“第4波”を懸念する声も上がる中での観光支援策は、逆に感染拡大の要因になりかねないと警鐘を鳴らしています。

宮城県や愛媛県などの例を見ても、いつ感染が急拡大するかを見極めることは非常に難しいことがわかります。本当の意味での経済の再生には何が必要なのか、中長期的な視点も忘れないようにしたいものです。

(2021年3月26日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)