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北朝鮮弾道ミサイル発射 各国の思惑解説

2021年3月25日 23:52

およそ1年ぶりに弾道ミサイルを発射した北朝鮮。なぜ今、発射に踏み切ったのか。アメリカと韓国が、弾道ミサイル発射に抑制的な対応をみせるわけとは。ソウル支局の原田敦史支局長に聞きます。

■韓国“弾道ミサイル”と断定せず

日本政府が早々に「弾道ミサイル」と発表したのに対し、韓国政府は公式には「短距離ミサイル」という言い方で、弾道ミサイルとの断定を避けています。

国防省報道官「(Q:弾道ミサイルとの判断は保留するのか?)一応、諸元について分析しているので…」

国防省の会見では、韓国メディアの記者から繰り返し、弾道ミサイルかどうか質問が出ましたが、報道官は「分析中」、「今話すのは適切でない」と言葉に窮する場面がありました。

日本では菅首相自身が、国連の安保理決議違反だとして強く非難したのと対照的に、韓国政府は発射についても「深い憂慮の表明」にとどめています。北朝鮮との対話の再開を模索する文在寅政権が、北朝鮮への過度な刺激を避けようと、抑制的に対応していることは明らかです。

■なぜ今、ミサイル発射 北朝鮮の狙いは?

一番の狙いは、アメリカのバイデン政権がどこまでの行動を許容するのか、見極めたいということだと思います。アメリカのブリンケン国務長官らが日本と韓国を訪問する中、先週、金正恩総書記の妹、与正氏は米韓合同軍事演習について「侵略戦争演習」などと談話で激しく反発しました。「南朝鮮(韓国)は『戦争の3月』を選択した」として今後、韓国に重大な措置をとると警告。バイデン政権に対しても「4年間、足を伸ばして寝たいなら、はじめから余計なことをしないほうが良い」とけん制しました。

そして、4日前、北朝鮮は安保理の決議に違反しない「巡航ミサイル」を2発発射。そのとき、アメリカも韓国も抑制的な対応をとったため、さらに挑発の度合いを高め今度は「弾道ミサイル」の発射に踏み切ったとみられます。

今、バイデン政権は対北朝鮮政策の見直しを進めている最中ですので、対応が定まっていないアメリカを揺さぶって、許容されるラインを探っていると考えられます。

■今年1月にも“巡航ミサイル発射”公表せず

25日、複数の韓国メディアがバイデン大統領の就任式直後にも巡航ミサイルの発射があったと報じました。ただ、韓国政府は公式に認めていません。

韓国国防省の報道官は25日、「巡航ミサイルについては公開しない、とアメリカとの間で話がなされている」と明らかにしました。ただ、去年4月、トランプ政権当時には、北朝鮮が巡航ミサイルを発射した際に韓国軍は当日のうちに発表していて、対応に一貫性がありません。つまり、巡航ミサイルを公表しない米韓の申し合わせは、バイデン政権の方針に沿ったものと考えられます。

北朝鮮と対話を再開したい韓国と、対北朝鮮政策が定まるまで様子見をしたいアメリカの利害が一致し、抑制的な対応をしていた可能性があります。

(3月25日放送深層NEWSより)