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ワクチン接種8割…北京で建物ごと“目標”

2021年3月18日 21:41
ワクチン接種8割…北京で建物ごと“目標”

今月、中国・北京の中心部にあるオフィスビル、そこで働く男性にある通知が届いた。「新型コロナウイルスのワクチン接種率80%を目指す」として接種を促す内容だった。国産ワクチンの大量生産と一斉接種が進む中国だが、現時点で希望しない人も含め、当局は接種を猛烈に後押ししようとしている。


<目標は8割…接種率に応じて“等級”付け>

「(ビルごとの)接種率に応じて安全等級を区分する」「5月までに区全域で接種率80%を目指す」

これは今月、北京市のとあるビルで出された通知に書かれた一文だ。市の中心部、朝陽区の幹部らによるワクチン接種の方針を示したもので、ビルなどの1棟ごとに接種目標を設定し、安全度の等級付けを導入することで入居者の接種を促そうというものだ。

新型コロナへの対応をめぐっては日本では個人に対しての呼びかけが多い。しかし、中国ではこれまで、ある建物で新型コロナウイルスの感染が判明すると、その建物全体を封鎖したり、建物の全員にPCR検査をしたりするなど、いわば「連帯責任」を求めるような強制的な封鎖管理が行われてきた。

そこへ建物ごとに目標設定といわば“採点”を取り入れることで、ワクチン接種でも連帯責任のような状況にして、接種を猛烈に促す狙いがあるとみられる。


<ワクチン接種「安全宣言」ポスターも…>

先の通知では、さらに「北京市はワクチン接種者に対する『優先政策』を打ち出す」方針なのだという。この優先政策が何を指すのか、現時点では明らかにされていない。

ただ、北京市内ではすでに接種を促すため、飲食店などに向けて接種率に応じたインセンティブを与える政策も始まっている。

ある区では飲食店の従業員のワクチン接種率が80%を超えると、当局が安全のお墨付きを与えるポスターを発行。ポスターには、大きく「ワクチンを打つべき人は打ちました」との文字が書かれている。店はこれを店頭に掲げて、当局公認の「安全宣言」をアピールできるしくみだ。

さらにタクシーの配車アプリでは、運転手の顔写真と共に「PCR検査の結果」や「ワクチン接種の有無」が一目でわかるようにするアイコンが登場した。ワクチン未接種の運転手であれば、キャンセルできるようになっている。


<若者たちにはためらいも…>

いま北京は、一般市民にもワクチンの接種が進んでいて、衛生当局の発表では約356万人がすでに接種を終えているという。北京市の人口約2150万人のうち、すでに15パーセント以上が接種を完了したことになる。

ただ、中国の若者たちには接種に対して慎重な意見も聞かれる。ある男性に理由を尋ねてみると、「一番は、いま北京は感染リスクが低いこと」とした上で、「副反応の報道が無さすぎる」と情報の不透明さを理由にあげた。また別の女性も「会社で必要と言われた人以外は、(ワクチンを)打った人はあまりいない。様子を見ている段階」と話す。

首都の絶対防衛を目指す中国では、北京における「集団免疫」の獲得は最優先の目標だ。来年には冬の北京オリンピックなど大規模なイベントも控えることから、外国との往来を回復させたいとの思惑も重なる。「連帯責任」の目標設定や「安全宣言」ポスターなどのインセンティブには、こうした状況下で、若者たちをはじめとした接種していない人を後押しする狙いがあるとみられる。