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バスケ渡嘉敷のケガ「神様なんていない」

2021年3月14日 19:35
バスケ渡嘉敷のケガ「神様なんていない」

去年12月、皇后杯準々決勝でバスケットボール女子日本代表のエース・渡嘉敷来夢選手(29=ENEOSサンフラワーズ)を悲劇が襲いました。相手選手のシュートをブロックした直後、膝に激痛が…診断結果は「右膝前十字靱帯断裂」。そのケガから2か月、人生初の大ケガを一番近くで応援しているのが同じチームで親友の岡本彩也花選手(29=ENEOSサンフラワーズキャプテン)。これまでメディアには一切話してこなかったケガの状況…2人だけが知る当時の秘話とは。

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同い年の渡嘉敷選手と岡本選手は女子バスケットボールの名門・桜花学園高等学校出身。高校卒業後も同じチームにそろって入団。14年間一緒のチームでプレーしています。

Q:渡嘉敷選手から見た岡本選手は
渡嘉敷選手「親友、家族みたいな存在」

Q:岡本選手から見た渡嘉敷選手は
岡本選手「家族、私にとっては一番大事な存在」

と、お互いがかけがえのない存在だと言います。渡嘉敷選手がケガをした瞬間、同じコートでプレーをしていた岡本選手に当時の状況を聞きました。

Q:渡嘉敷選手がケガをした時はどんな状況だった
岡本選手「一番感じたのはウソであってほしいという気持ち。いつもだったら立ち上がって『大丈夫です』って言うんですけど、自分からコートの外に出ていったので、これはちょっとやばいんじゃないかと認識しました」

Q:近くで渡嘉敷選手を見た時はどんな感じだった
岡本選手「ダメだ、できないっていうのは顔で分かりましたね。ずっと一緒にやっているので。近づいてみて顔が引きつっていたので、これはもう厳しいんだろうなと覚悟しました。『大丈夫?』って声をかけた時に『大丈夫』って笑顔で言ってたけど、その笑顔を見て『あ、ダメだったんだな』って分かりました」

渡嘉敷選手がケガをしたのは皇后杯準々決勝の試合中。一度、ロッカールームに戻った渡嘉敷選手はチームドクターから「右膝の靭帯が切れているかも」と伝えられたそうです。

一方、岡本選手はまだ試合中だったこともあり、状況を知らないままコートで戦っていました。そして試合後、渡嘉敷選手の口からチームメートに自分の状況を伝えた時、岡本選手が発した言葉が渡嘉敷選手は忘れられないと言います。

渡嘉敷選手「ケガした試合後にみんなの前で『(右膝前十字靭帯が)切れてるって言われたから、ちゃんと病院の診断結果が出たらみんなの前で伝えるね』って話をした時に、岡本の第一声が『神様なんていねーじゃねーか』でした」

岡本選手「悔しくて…なんで渡嘉敷なんだろうって思って、それしか抵抗することがなかったんです。せめてもの思いで神様に対してこういう言葉を発したんだと思います」

Q:ケガの翌日、病院での診断結果を聞いた時は
岡本選手「今までそんな大きなケガがなかったので、なんて声をかけていいか分からなかったですね。でもやっぱり今までチームを引っ張ってくれてたし、支えてきてくれたので、それを私が受け継がないといけないと思いました。マイナスに考えずに前を向いてチームを引っ張っていこうと考えました」

チームのキャプテンでもある岡本選手は、「この皇后杯を優勝することで渡嘉敷が責任を感じないようにしてあげたい」とチームを引っ張りました。ケガをした渡嘉敷選手は準決勝と決勝はベンチから応援。

Q:渡嘉敷選手のベンチからの声援は力になった
岡本選手「もちろん。私にとっては本当に支えです。今まで高校の時からずっと助けてもらっていたし、コートの外でもあんなにチームのことを支えてくれる、私のことを支えてくれる人はいないんじゃないかと本当に思いました。私以外のチームのみんなも渡嘉敷がいることで、みんなも頑張ろうって思ってくれてたんじゃないかなと思います」

コートの中では岡本選手がチームのキャプテンとして、コートの外では渡嘉敷選手がチームの支えとして声援を送り続け、チームは見事皇后杯8連覇を達成しました。

そして表彰式ではとても印象的なシーンが。それは渡嘉敷選手と岡本選手がお互いに優勝メダルを掛け合ったのです。

渡嘉敷選手「自分が岡本にメダルをかけてあげたいって言いました。すごい頑張っていたし、私からメダルをかけてあげたいなって思いました。そしたら『じゃあ私もかけてあげる』って岡本も言って、『お疲れさま、おめでとう』という感じでした」

岡本選手「渡嘉敷から『おめでとう、頑張ったね』と言ってくれました。今までで一番よかったと思える優勝でしたね。やっぱりコートに立てなかったという悔しさがあっていろんな気持ちがあるんだろうなと思って、でもやっぱりつらくてもコートの外で最後まで戦ってくれて一緒に優勝できたといううれしさと、一緒に戦ってくれてありがとうという気持ちで私はメダルをかけました。来年は一緒にコートに立って一緒に優勝しようという気持ちです」

写真提供:ENEOSサンフラワーズ