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ネットで話題の「キャベツウニ」が商標に

2021年1月20日 12:40
ネットで話題の「キャベツウニ」が商標に

「癒やされる」「かわいすぎて萌えた」――。この年末年始、廃棄されたキャベツを競うように食べるウニの姿がネット上で話題になりました。

神奈川県の水産技術センターで研究されているこのウニ。数年前からメディアでたびたび取り上げられています。2020年10月には県が「キャベツウニ」を商標登録。研究者は「認知度が上がり、新たな取り組みが広がれば」と話しています。

キャベツを飽きずに食べた「キャベツウニ」の研究開発を続けているのは、神奈川県三浦市にある県水産技術センターです。ウニは海藻を食べて育ちますが、県の沿岸では15年程前から温暖化の影響などで広範囲にわたって海藻類が減る「磯焼け」という現象が起きていました。海域では身の少ないムラサキウニが大量に発生し、海藻類を保護するため駆除されていました。

同センターで水産物の加工など担当していた臼井一茂主任研究員は、駆除される大量のウニを養殖して商品化できないかと考えました。センターのある三浦半島はキャベツの名産地で、地元の農家は規格外のものやキズついたキャベツを毎年、廃棄していました。

そこで臼井さんがこれらのキャベツを引き取り、ウニに与えてみたところ、飽きることなく食べ続けることが分かりました。さらにキャベツを食べたウニは、身が増え、苦みが減るだけでなく甘みも増すことが分かったのです。

県内の漁協や民間企業でも養殖試験が始まり、一部のウニは地元のスーパーなどで販売されるなど、新たな流通も生まれました。県は昨年10月、一般の人にも広く知ってもらい、ウニの販売促進につなげたいとして、この「キャベツウニ」を商標登録しました。

■「癒やされる」ウニの姿が話題に
日本テレビのニュース専門チャンネル「日テレNEWS24」では、2019年11月に番組『the SOCIAL』でこの研究を紹介。映し出された「1つのキャベツを2匹のウニが同時に食べる様子」や「与えられたミカンも食べる姿」などが反響を呼びました。

この映像が2020年12月末、日本テレビ報道局のYouTubeで、過去の傑作選として掲載されると、公開から2週間で再生回数は190万回以上を記録しSNSで大きな話題に。

「駆除されるものと廃棄されるものという、マイナスとマイナスを掛け合わせてプラスになった取り組みは素晴らしい」といった声のほか、「ウニがキャベツを食べる姿に癒やされる」「ウニをかわいいと思う日が来るなんて」などといった感想が寄せられました。

また、フリー素材サイト「いらすとや」は、1月5日に「キャベツを食べるウニ」のイラストを公開。こちらも広く拡散されました。「いらすとや」によると描いた理由は「食べている姿が可愛かったので」ということで、「イラストを喜んでいただけて私もとても嬉しいです」とコメントを寄せました。

■ウニに続け? 広がる「磯焼け」対策
磯焼け対策として誕生した「キャベツウニ」。その反響はネットの外にも広がっています。

2020年11月に回転寿司チェーン・くら寿司が発表した「『ベジタブルフィッシュ』ニザダイ」は、磯焼け対策で駆除の対象になっていたニザダイにキャベツを与えることで、食べた際の臭みを軽減し、食用として商品化したものです。

くら寿司はこの養殖プロジェクトについて、「キャベツウニをヒントにした」と明らかにしています。現在もキャベツウニの研究を続けている臼井さんは、「磯焼けの被害は神奈川県だけでなく、全国各地で起きています。商標登録などを通じて『キャベツウニ』の認知度が上がることで、こうした磯焼け対策への理解が深まり、各地で地元の農産物を使った養殖など、新たな取り組みが広がればうれしいです」と話しています。