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Go To Eatに見る飲食店の明暗

2021年1月2日 20:04
Go To Eatに見る飲食店の明暗

外食需要の喚起策として政府が打ち出した「Go To Eat」キャンペーン。「Go To Eat」には、オンラインの予約サイトを通じて得られるポイント還元と、プレミアム付食事券の発行という2種類があり、第1次補正予算で事業費2003億円が計上された。

2020年10月1日から開始されたポイント還元は、主なサイトではおよそ1か月半で予算分のポイント付与が終了するほど利用者の関心を呼んだ。だが、ポイント還元のキャンペーンが終了したことで、客単価が低い店では予約件数が激減したという。

■低価格帯の店が受けた打撃とは

予約管理システムを提供する「トレタ」が契約する飲食店およそ1万店のデータによると、1人あたりの予算が2000円未満の飲食店の予約件数は、11月の1週目(2日~8日)は前の年の同じ時期と比べて128%となりピークを迎えた。

ところが、感染の再拡大やポイント還元の付与が終了したことなどを受け、予約数は急激に減少し、4週目(23日~29日)には、ピーク時に比べ3割以上落ち込む結果となった。

2000円から6000円未満の店の減少幅はおよそ20%から2%。一方6000円以上の店の減少幅は10%前後と比較的小さかった。つまり、低価格帯の店ほど、ポイント付与が終了したことに伴う影響が大きかったとみられる。

■「トリキの錬金術」が話題に

さらに、低価格帯の店では、悪質な利用をする客に悩まされることとなった。政府が細かいルールを設けなかったことで、一部の利用客が“ポイントの荒稼ぎ”に走ったからだ。安い金額の1品だけを注文してオンラインのポイントを稼ごうとするいわゆる「トリキの錬金術」。鳥貴族での利用が発端となった。

低価格帯の店では、予約サイトに払わなければならない手数料も重しとなった。政府は、これほどの混乱は想定していなかったという。

■「自由度」が売りのはずが・・・

政府が期待していたのは自由な制度の中で、飲食店自身がアイデアを出して稼げる仕組みを作ることだった。例えば、キャンペーンを使うときは席の利用時間を区切ったり、回転率が低いハッピーアワーの時間帯に限ったりするなど、飲食店が自由に運用することを考えていたという。

■“無限”“鬼滅の刃”で・・

逆に、キャンペーンをうまく利用した飲食店もある。例えば、回転寿司の「くら寿司」は、客単価が1000円程度のため、ディナータイムに付与される1000ポイントを使えば、繰り返しただで食べられるため「無限くら寿司」と呼ばれ、ネット上で話題になった。

また、9月から10月にかけて人気アニメの「鬼滅の刃」とコラボキャンペーンを行い、10月に「Go To Eat」に参加。11月の売り上げは前の年より30%ほど伸びたという。

くら寿司は、来店してからポイントが付与されるまでの期間が短い、予約サイト「EPARK」を使ったことなども、利用客にとって便利だったのではないかと分析している。ポイント還元のキャンペーンは、飲食店側の裁量が大きく、個々のマーケティング力が明暗を分けたことになる。

■飲食店にも利用客にも分かりやすい食事券

一方、ポイント還元とともに発行された食事券。関係者によると、政府はもともと食事券の発行を計画していなかったという。しかし、飲食店にも利用客にも分かりやすい食事券も取り入れた方がいいという提案で、予算が割り振られることになった。

実際、キャンペーンが始まってから12月の中旬時点で登録している飲食店の数は、食事券の方がポイント還元よりおよそ6万5000店舗上回っている。

現在、コロナの感染再拡大に伴い、複数の地域で食事券の販売は一時停止されているが、飲食店への支援を継続するため、第3次補正予算でも食事券は追加発行されることになった。

■ニューノーマルな時代に飲食店に求められること

しかし、食事券は一時的な効果しか生まない。コロナ禍でも客を引きつける魅力あるメニューや感染対策を意識した店舗構造など、客が求めるニーズは変化している。飲食店には「Go To Eat」のその先を見据えた工夫や試行錯誤が求められる。

(*写真:農林水産省ホームページ)