×

新型コロナウイルスと共存はつづく?(2)

2021年1月1日 18:04
新型コロナウイルスと共存はつづく?(2)

新型コロナウイルスが初めて確認されたのは、2019年暮れの中国・武漢市だった。感染は瞬く間に、世界に広がり、日本国内での初の感染確認は、2020年に入ってすぐの1月16日だった。その後も、感染拡大は収まらず2021年を迎えた。私たちは、この先、新型コロナウイルスとどう戦い、どう共存していくのか?

■人類初の新しいワクチン

通常、ワクチンの開発には数年かかる上、安全性の問題や効果が十分でないなどとして、実用化されないことも多いが、新型コロナウイルスのワクチンは異例のスピードで開発された。このうち、ファイザーとモデルナのワクチンは、遺伝子を使った新たな技術を使っていて、このタイプのワクチンは、これまで実用化されたことがなく、人類初の接種となる。

新型コロナウイルスには複数の「突起」があり、この「突起」がヒトの細胞にくっついて、ウイルスが細胞に入り込み、感染を引き起こす。そこで、研究者らは新型コロナウイルスのこの「突起」部分を作るための「設計図」にあたる遺伝子、メッセンジャーRNAというものを解読、これを人工的に作って、ワクチンとしてヒトの体に注射することにした。

つまり、ヒトの細胞内にあえて「突起」部分を作らせることで、体がこれを「敵」だと認識し、次に本物の「突起」が来た時に攻撃する「免疫」を作らせるという仕組みだ。

ヒトの体内にウイルスの遺伝子を入れ込むという人類初のワクチンだが、現時点で、各メーカーは、重篤な安全性の懸念はないと報告している。

しかし、今後、どのような副反応がでるかは注視する必要がある。一般的に副反応が全くないワクチンはないといわれ、たとえばファイザーは、臨床試験段階で、注射した部分の腫れ、発熱、けん怠感などが一定の割合でみられたと報告している。また、今後、数千万人、数億人が接種すれば、まれとはいえ、重い副反応がみられる可能性もある。

また、ウイルス学の専門家は、新型コロナやインフルエンザなど肺など呼吸器の病気に対するワクチンで、感染そのものを防ぐのは難しいと指摘している。たとえば、今回のファイザーのワクチンでみると、打った人は、打たない人に比べて、新型コロナ感染症を「発症した」人の数が少ないことをもって、効果があると発表している。つまり、ワクチンに「発症」や「重症化」を防ぐ効果はあるとしても、打てば感染しないとは言い切れないことになる。

また、ワクチンによってつく免疫がどれほど持続するのかは、まだ分からないため、毎年の接種が必要となる可能性もある。日本で、ワクチンが承認され、接種が始まるのは、2月か3月とみられる。まずは、新型コロナ患者の治療にあたる医療従事者、ついで、高齢者、その後、特定の持病がある人を優先しながら、一般の人が接種する予定で、すべての費用は、国が負担し、自己負担なしの無料で行われるが、メリットとデメリットを考えた上で、打つか打たないかは、個人の判断となる。

一方、専門家は人口の7割程度がワクチンを打たないと集団的な免疫効果はなく感染の拡大は抑えられないとしている。

■以前の生活を取り戻せるのか?

2021年も新型コロナウイルスとの戦い、共存はつづく。未知のウイルスとの戦いは、当初、政府も国民も手探り状態だった。厚生労働省で2020年夏まで、医系の官僚のトップとして、新型コロナウイルス対策を指揮した鈴木康裕前厚生労働医務技監はこう話す。

「2021年の後半にワクチンを受ける人が人口の半分を超えれば、感染の勢いは抑えられると思っている。ただ、全く以前と同じ生活に戻れるかというと、難しいと思っている。感染の勢いが収まったとしてもある程度、感染はつづく」

国立感染症研究所の脇田隆字所長は、「感染が確認されてから一年間、色々な経験をして新型コロナに対する付き合い方もある程度分かってきた。また分からないこともたくさんあるが。2021年はもっと付き合いやすくなると期待している」と言う。

専門家は、ワクチンが普及しても、3密を避けることや、手洗い、マスク着用はしばらく必要だろうと指摘している。また、新型コロナウイルスの流行が収まっても、世界のどこかを起点に新たな感染症が広がる可能性もあり、日常生活や店舗の形態、テレワークの推進など感染対策を勘案した「新しい日常」の模索をつづける必要がある。