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観光立国タイ新型コロナ打撃からの復活は?

2020年12月29日 20:06

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国で渡航が制限された2020年。タイは4月から国際線の乗り入れを禁じる厳しい入国制限を設けた。

その結果、連日にわたり新規感染者数ゼロが続くなど、感染拡大を抑えることはできたが、半年にわたり外国人観光客もゼロとなった。

■崖っぷちに立たされた観光産業
やみつきになる辛さのタイ料理、歴史的な仏教寺院やビーチリゾートなど観光資源にあふれ、2019年には4000万人にのぼる外国人が訪れた観光立国のタイ。

観光産業はGDP=国内総生産のおよそ2割を占め、その大部分を外国人観光客に頼ってきたため、タイの経済は崖っぷちに立たされた。

観光客でごった返していた歓楽街からは人影がなくなり、飲食店は軒並み休業。

バンコクでスーツのオーダーメードなどで多くの外国人の顧客を抱えていた評判のテーラーは、「1件もオーダーがない。そもそも布を仕入れに行くこともできない」と肩を落とす。

危機的状況の観光業を復活させようと、タイ政府はいま、あの手この手の策に乗り出している。

■国内旅行促進でタイ版「GoTo」も
国内の感染状況が落ち着いてきた7月、タイ政府はまず、国内旅行の活性化に乗り出した。タイ国民を対象に、航空券代や宿泊代の40%を政府が負担する「WeTravelTogether」というキャンペーンを開始。

訪問先での食事などに使えるクーポン券も提供する、いわば、タイ版の「GoToキャンペーン」だ。さらに、11月と12月には新たに祝日を増やすなどの奇策に打って出た。土日と合わせた4連休を設定し、より多くの人が旅行に行きやすくするための措置だという。

■高級ホテルの生き残りをかけた戦略
こうした中、多くの宿泊施設で、タイ国民だけではなくタイに住む外国人も対象にした、特別割引を実施している。

5つ星の高級ホテルも、次々に格安プランやスパとアフタヌーンティーなどがセットになったプランを出し、普段なら泊まることができない高級リゾートに足を運ぶ人が増えた。

格安プランでプーケットを訪れたタイ在住の日本人女性は、「いつもは外国人で混雑しているビーチで、静かに過ごすことができた。海も以前よりきれいで、多くの生き物が見られた」と話す。

また、ビジネス目的で入国した外国人の隔離施設として稼働することに活路を見いだそうとするホテルもある。タイは日本と違い、入国後の自宅待機は認められず、政府が隔離施設と認定するホテルに自己負担で14日間とどまる必要がある。

資金に余裕のあるビジネスマンを獲得しようと、高級ホテルも参入し隔離プランを出している。ただ、こうした、さまざまな取り組みをもってしても外国人観光客がもたらしていた収入には遠く及ばず、タイの観光協会の調べによると、2020年の観光収入は前年から83%減少するとみられている。

■外国人観光客受け入れ再開。日本からの観光客は?
タイ政府は10月、約7か月ぶりに外国人観光客の受け入れを再開した。そのために新たに発給を始めたのが「特別観光ビザ」だ。

長期滞在向けのものでタイに最長270日間滞在が可能となる。第一陣として10月20日、中国からの観光客40人がスワンナプーム国際空港に到着し、その後も中国を中心に観光客がタイを訪れた。

ただ、この特別観光ビザを申請できるのは、タイ保健省が国ごとに新型コロナウイルスの感染拡大の度合いを分析したリストのうち「低度感染危険国」から入国する人に限られる。日本は「中度感染危険国」に指定されているため、当初、特別観光ビザを申請することはできなかった。

タイ政府によると、特別観光ビザの利用者は29か国・地域の825人にとどまっているということで、伸び悩みが課題だ。そこでタイ政府は12月8日の閣議で特別観光ビザの対象を全ての国と地域に拡大することを決定した。

また、さらなる入国規制の緩和策としてタイ政府は12月17日、今後、日本を含む56か国からはビザ無しで入国を許可する方針を示した。具体的な時期については明らかにしていない。

短期の観光目的での渡航ができることになるが、出国前72時間以内のPCR検査の陰性証明の取得に加え、引き続き、自己負担での14日間の隔離が課されるため、ハードルが高いといえる。

外国人観光客が本格的に戻るのは、いつになるのか。年末年始の旅行シーズンをひかえた12月19日、バンコク近郊のサムットサコン県で500人をこえる過去最多の集団感染が確認された。

感染者数が急増していることに加え、タイ国内では反政府デモが収束するメドがたたず、観光業へのマイナスの影響は2021年も続きそうだ。