×

死亡男性への供え物を…差別撤廃への思い

2020年12月25日 5:41
死亡男性への供え物を…差別撤廃への思い

アメリカ大統領選挙では黒人への差別問題が一つの争点となりました。白人の警察官によって黒人男性が死亡した事件がきっかけでしたが、その男性にささげられた供え物などを集め、事件を風化させないようにと活動する黒人女性がいます。

          ◇
ところ狭しと並べられた段ボールや箱の数々。床には絵や手紙が並べられています。一枚の紙も丁寧に扱う黒人女性。ここにある絵や手紙の全てをある場所から集めてきました。

今年5月、ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警察官に首を膝で押さえつけられ死亡しました。この事件をきっかけに、黒人差別の撤廃や警察改革を訴える抗議活動が全米に広がりました。

抗議活動の象徴となった事件現場には、全米から多くの人が訪れ、毎日、お供え物や花がささげられていきます。この地域で生まれ育ったジャネル・オースティンさん。事件直後から毎朝のようにごみを拾い、お供え物を管理する活動のリーダーとして、この場所を守り続けています。

オースティンさん「この場所は黒人の痛みと悲しみの場所です。正義の場所であり、希望の場所です」

週に一度、現場にささげられたお供え物や花を、10分ほど離れた建物に運び込みます。

オースティンさん「いくつかは随分破損してしまっているわ」

スタッフ「本当ね」

活動に賛同する地元の住民と協力して、お供え物を丁寧に保管していきます。中には燃やされたり、汚されたりしたものも含まれています。

オースティンさん「(ここには)あらゆる形や種類のものがあります。中には小さな岩や水晶のようなものもあるし、自転車のヘルメットが残されていたこともあります。みなさん、自分にとって大切なものを残していきます」

これまでに保管したお供え物は数千点に上ります。現場を訪れた人の差別撤廃への思いをつなぐため、オースティンさんはこれらを集めて、ジョージ・フロイドさんの追悼施設をつくろうとしています。

オースティンさん「ギャラリーでこれらを展示して、来訪者が事件を思い出し、人種的正義に向けて、実際に何か行動する気持ちになれるようなものにしたい」

オースティンさんたち黒人有権者の声は、白人至上主義を擁護するような発言を繰り返してきたトランプ大統領に逆風となり、バイデン次期大統領、そして、黒人女性のハリス次期副大統領の誕生を後押ししました。さらに、今月9日、バイデン次期大統領は新政権の国防長官に初めて黒人を指名するなど、人種的多様性を重んじる姿勢を打ち出しています。

オースティンさんもバイデン・ハリス政権に期待を寄せていますが、大統領選が終わった今も危機感を持ち続けるべきだと言います。

オースティンさん「(黒人の)カマラ・ハリスが副大統領に選出されたことで、その成功に安心してしまって、もはや戦う必要がないと考えてしまう人が出てくることを危惧しています」

アメリカ社会に長く根深く残る黒人差別。一人一人が現実と向き合い行動することこそが解決に向けた第一歩です。