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尾上松也「1年間の思いをぶつけたい」

2020年12月12日 11:07
尾上松也「1年間の思いをぶつけたい」

2020年、テレビドラマでの活躍も印象的だった尾上松也さんが、この12月、およそ1年ぶりに歌舞伎の舞台に立っています。「役者冥利に尽きる年でもあった」と語る尾上松也さんに日本テレビの市來玲奈アナウンサーが聞きました。

【市來玲奈の歌舞伎・花笑み/第3回・尾上松也さん】

日本テレビアナウンサーの市來玲奈です。大学時代に学んだことがきっかけで、歌舞伎の魅力にとりつかれました。そんな歌舞伎初心者の私自身が、これから、さまざまな方から歌舞伎の面白さを学びながら、若い人たちへも、思わず笑顔になるような歌舞伎の魅力をお伝えしていきたいと思います。

第3回は尾上松也さん。歌舞伎の舞台だけではなく、映画、ミュージカルなど活躍の場を広げ、今年はテレビドラマ「半沢直樹」の瀬名洋介役も印象的でした。12月の「十二月大歌舞伎/第一部・弥生の花浅草祭」でおよそ1年ぶりに歌舞伎の舞台に立っています。“初役”そして、“四役早替り”への思いを伺いました。


■「初役というのは挑戦」

――舞台は今年1月の新春浅草歌舞伎以来。出演のお話を聞いていかがですか。

「非常にありがたいのと同時にそれだけ離れていたので、できるかなという不安もある。でも1年ぶりに出させていただく喜びのほうが大きかったかもしれないですね」

――歌舞伎座での公演は昨年10月以来ですが…

「他のお仕事で前や横を通ることはあったので、距離を感じていたわけではないけれど、楽屋を使って出演するというのは本当に1年以上ぶり。僕に関しては四部制になって、このコロナ禍で歌舞伎座に出演するのが初めてですから、皆さんの足を引っ張らないか不安ですね」

――今回の演目「弥生の花浅草祭」において初役を勤められますが、心境はいかがですか。

「それも驚きの一つ。この状況下で歌舞伎の中で初役というのは非常に挑戦なので、挑戦させていただける喜びは大きいですね。40分弱、(片岡)愛之助さんと2人でずっと踊り続けるので体力的にもハードですが、思いっきりこの機会に、今までの1年間の思いをぶつけられたらいいなと思います」

――初役を勤めるにあたって心がけていることは。

「1か月余計なことを考えずに、とにかく教えていただいたこと、やるべきことを一生懸命やれるようにするのが第一。その先にようやく自分の色というところで気づきがある。変に欲を出すのではなくて、まずは真摯に今自分がやれること、教えていただいたことをやるということが基礎的な第一歩になるのかなと思いますね」


■「役者冥利に尽きるなという年でもあったのかなと」

――自粛期間中に新しく始めたことは。

「キャンドルにハマりました。とにかく気持ちが落ち着く。家でゆっくりリラックスできるのが大きいですね。やってみたくてというよりは、色々断捨離しようと思った中でキャンドルが出てきて、せっかくだからつけてみようかなと。いつの間にかすごい数になっちゃいましたけど。自分のリビングのテーブルがもうキャンドル以外のものが置けない状態になっていますね」

――ドラマでの活躍も印象的だった今年ですが、舞台と映像作品で心構えに違いはありますか。

「歌舞伎の舞台が中心ということで、日頃から何事も大きく表現することを勉強してきましたから、映像に出るときは抑える意識はしています。(「半沢直樹」でも)僕は抑えていましたけどね(笑)」

――2020年を振り返ってみて…

「皆さんそうだと思いますが、本当に苦しい1年だったなと。これが『2020年はこんなだったね』と笑えるような状況に早くなることを祈るばかりですよね。ただ一つ言えることは、自分としてはその苦しい状況の中で、皆さんが元気になるようなドラマに出させていただいて少しでも勇気を与えられるようでしたら、役者冥利に尽きるなという年でもあったのかなと思いますね」

――最後に「十二月大歌舞伎 弥生の花浅草祭(12月26日千穐楽)」の見所を教えてください。

「本当に華やかな舞踊になっているので肩の力を抜いて、私と愛之助さんの四役早替りのスピード感、歌舞伎ならではの早替りの面白さ、華やかさというのを楽しんでいただけたら幸いかなと思います」

◇◇◇

稽古期間中にお話をしてくださった松也さん。感染対策のため稽古中もマスクを着用していて、今回の演目のようなハードな踊りは体力も使い、苦しいとのこと。「今年8月、配信での舞踊公演の際に、少しの動きでも息切れしてしまった自分に驚いた」と笑いながら話してくださいました。

自粛期間が続いて体力が落ちているため、「初日までに元の体に戻ってほしい…でも愛之助さんがいらっしゃるのは本当に心強い」と少しホッとされていました。お二人の息の合った華やかな舞踊、そして松也さんの四役早替りに是非注目してください!

次回は中村莟玉(かんぎょく)さんにお話を伺います。

【尾上松也(おのえ・まつや)】
1990年5月、「伽羅先代萩」の鶴千代役にて、二代目尾上松也を名のり初舞台。20代前半で自主公演「挑む」を始め、2014年6月コクーン歌舞伎「三人吉三」ではお坊吉三を演じた。歌舞伎以外ではミュージカル「エリザベート」などで活躍。

【市來玲奈の歌舞伎・花笑み】
「花笑み」は、花が咲く、蕾(つぼみ)がほころぶこと。また、花が咲いたような笑顔や微笑みを表す言葉です。歌舞伎の華やかな魅力にとりつかれた市來玲奈アナウンサーが、役者のインタビューや舞台裏の取材で迫るWEBオリジナル企画です。