家族の役割 ~最期の過ごし方~
父の最期を家族で過ごそう、そう決めたお医者さんがいました。
古屋聡さん「半年以内ぐらいで」
父・政美さん「おおお、そのぐらいで死ぬっちゅうことだな」
聡さん「そう」
古屋聡さん山々を越えて過疎の集落を回り訪問診療を続けています。
聡さん「どんなもの食べてたりどんなゴミ出してるのか、ある意味一目瞭然だし、在宅なら分かるけど病院だと分かりにくい」
これまでに在宅で看取った命は250人以上…。
地域医療と日々向き合ってきました。
息子の患者になった古屋さんのお父さん。
病名は胆管がんです。
姉・仁美さん「時間がないのお父さんには」
父・政美さん「おお、半年先っちゅうようにだな」
娘・仁美さん「だから好きなことすればいいんだよ」
聡さん「いいかい?それまで元気に同じようにいって半年で急に死んじゃったりしないのよ」
父のおかげで医師の道に進めました。
“父の最期”に寄り添いたい…。
古谷さんは妻とも相談し一緒に暮らすことを決めました。
認知症で施設で暮らすお母さんも家へ連れて帰りました。
聡さん「なに食べたい?」
父・政美さん「迷っちまうな…」
久しぶりに一緒に暮らす、妻・しずゑさんを見て、お父さんはちょっぴり照れくさそう。
元気そうに見えてもお父さんの病気は確実に体をむしばんでいました。
父・政美さん「車に乗れば子どもに怒られてるだよ。『車のカギを預かっとく』なんて言われてね。でも都合悪いじゃんね」
聡さん「(父は)自由にやってるんです。朝は草刈っていたでしょ?そんなにやらない方がありがたいよね危ないから」
39年ぶり、家族とのかけがえのない時間。
聡さん「お父さんさぁ、今日ってお母さん誕生日なんだよ」
父・政美さん「そうよそうよ」
聡さん「88だ」
父・政美さん「農協で20万もらうようになってるだ」
この日、いつも通り車で畑に行こうとしたお父さんでしたが…。
聡さん「さっき車が出る時にさ、後ろにクラクションすげえ鳴らされたけど。すげえ文句言われたよ」
父・政美さん「そうか」
聡さん「だから約束通り運転は無しだわ」
父・政美さん「いいや」
聡さん「いやいやカギを貸してごらん」
父・政美さん「車に乗れなきゃ都合悪いだわ!」
宣告された余命の半年は過ぎていましたが、別れは近づいていました…。
父・政美さん「親が長生きしたら大変だわあ」
この3日後のことでした。
姉・仁美さん「お世話になりました」
お父さんは古屋さんが台所に立ったほんのわずかな合間に息を引き取りました。
歳を重ねて気付いた、家族の役割。
聡さん「最期に思いがけなくね、3人で暮らすことが出来て、もちろん姉も手伝ってくれたんですけど、一緒にいる時は3人でいながら生活できたのはちょっと楽しかったですね」
1日が終わろうとした時
姉・仁美さん「あ!お母さんと話せるね。あああ、お母さん!久しぶりだね、話せるのお母さん」
母・しずゑさん「ハハハ」
聡さん「お父さんがあっち逝っちまったんだよ」
姉・仁美さん「お母さんのこと心配してた。つらい思いさせたって」
母・しずゑ「もういいよ…」
姉・仁美さん「もういいよね?お父さんに言っとく。お父さんホッとすると思うよ」
たくさんの幸せをありがとう…。
※山梨放送で制作したものをリメイク。2020年11月放送、NNNドキュメント「家族の役割」より。
【the SOCIAL×NNNドキュメントより】
▼フルバージョンはHuluにて12月15日より配信