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市川染五郎「新しいことに挑戦する役者に」

2020年11月24日 14:01
市川染五郎「新しいことに挑戦する役者に」

「教えていただいたことを体現できるようにしなければと、毎回思っています」。そう語る歌舞伎俳優の市川染五郎さんは、歌舞伎座で公演中の「吉例顔見世大歌舞伎」では、初めての役に挑んでいます。日本テレビの市來玲奈アナウンサーが取材しました。

【市來玲奈の歌舞伎・花笑み/第2回・市川染五郎さん】

日本テレビアナウンサーの市來玲奈です。大学時代に学んだことがきっかけで、歌舞伎の魅力にとりつかれました。そんな歌舞伎初心者の私自身が、これから、さまざまな方から歌舞伎の面白さを学びながら、若い人たちへも、思わず笑顔になるような歌舞伎の魅力をお伝えしていきたいと思います。

第2回は、市川染五郎さん。十代目松本幸四郎さんを父に持ち、端正な顔立ちが魅力的な染五郎さんですが、まだ15歳という若さ。 11月の「吉例顔見世大歌舞伎/第四部・義経千本桜 川連法眼館」で1年ぶりに歌舞伎座の舞台に立っています。

初役に挑んでいる姿には、まさに次世代を担う風格が漂っていました。


■「お客様がいることで舞台は成り立つ」

――1年ぶりの歌舞伎座での公演はいかがですか。

「いつ歌舞伎がまたできるんだろうとずっと不安な中、過ごしていたので、とにかく嬉しいです。幕が開いて、お客様が見える、今まで感じたことがないような感覚。お客様がいることが当たり前だったけど、当たり前じゃないんだなと。お客様がいることで舞台は成り立つんだなと感じました」

――今回の「義経千本桜 川連法眼館(通称・四の切)」では、源義経役は“初役”となりますが…

「以前勤めた『勧進帳』の義経は、お能からきた作品なので、割と形が決まっているので、それに比べると、もう少しリアルな義経ですね。義経というキャラクターが自分は大好きなので、義経という人物について自分で調べたことも生かせたらいいなと思いながらやっています」

――“初役”を勤めるにあたって、ご自身で何かされることはありますか。

「何かお役をやることになると、父に習います。父に台詞の稽古をしてもらって、父が昔勤めたことのある役だと、父の映像を見ます。父が勤めたことのない役だと、過去の映像をもらえるので自分がお手本とする方の映像を見て、自分の体に染み込ませる感覚ですね。教えていただいたことを体現できるようにしなければ、と毎回思っています」

――今回、お父様からはどのようなご指導がありましたか。

「“四の切”の中で、一番位が高いお役なので、堂々とした存在感・立派な感じを出せるといいよねと、言われました。ほとんどダメ出しばかりですけど。でも父は良くなっていると思うところは言ってくれる。その役の気持ちや、どのような時代背景かということも教えてくれるので、役がつかみやすいですね。父から教わると」


■「新しいことに挑戦していくような役者に」

――同世代に歌舞伎の魅力を広めるには…

「難しいイメージがまだ多いと思うけれど、ストーリーを理解しなければいけない、勉強しなければいけないものではないと自分は思っています。特に、色彩が豊かなところが一つの魅力。“綺麗だな”“面白いメイクだな”という感覚で見ていただきたいし、伝えていきたいですね」

――どのような歌舞伎役者になりたいと思っていますか。

「自分の高麗屋という家は代々、色々なことに挑戦してきた。自分もとにかく色々なことに挑戦して、色々な年代の方・海外の方に歌舞伎の良さを知ってもらうために、新しいことに挑戦していくような役者になりたいです」

――最後に「吉例顔見世大歌舞伎 義経千本桜 川連法眼館(11月26日千穐楽)」の見所を教えてください。

「『義経千本桜』という作品は歌舞伎の三大名作と言われているほどの有名な作品なので、“THE・歌舞伎”というものが見られます。日本の伝統芸能の美しさを感じていただければと思います」

◇◇◇

ゆっくりと考えながら、一つ一つの言葉を噛みしめて答えてくださった染五郎さん。「自分は人見知りで、流行もあまり知らない…」とのことで、プライベートでも仲の良い同年代の歌舞伎役者・市川團子さんから最新の流行りを教えてもらいながら、お芝居では團子さんの情熱にいつも刺激を受けているそう。

「若い人には歌舞伎を難しいと思わずに、感覚で見てほしい」と話す姿は、15歳とは思えないほど落ち着いていて、歌舞伎の未来、次世代を見据えた考えをお持ちだと強く感じました。新しいことに挑戦していく染五郎さん、これからも追っていきたいと思います! 

次回は尾上松也さんにお話を伺います。

【市川染五郎 (いちかわ・そめごろう) 】
2007年6月、2歳の時に藤間齋の名で初お目見得。2009年6月、四代目・松本金太郎を名乗り初舞台。2018年1月、八代目・市川染五郎を襲名する。

【市來玲奈の歌舞伎・花笑み】
「花笑み」は、花が咲く、蕾(つぼみ)がほころぶこと。また、花が咲いたような笑顔や微笑みを表す言葉です。歌舞伎の華やかな魅力にとりつかれた市來玲奈アナウンサーが、役者のインタビューや舞台裏の取材で迫るWEBオリジナル企画です。