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「後期高齢者」の受診 負担引き上げを議論

2020年11月19日 20:57

政府は、75歳以上の高齢者が医療機関を受診する際の窓口負担を、現在の1割から2割に引き上げることを検討しています。その対象をどの程度の収入の人にするか、議論が行われました。

現在、75歳以上の後期高齢者が医療機関を受診した際の窓口での自己負担割合は、現役世代並みの年収がある人(後期高齢者の約7%)は3割でその他の人は、原則1割となっています。

この後期高齢者の医療制度に必要な費用が足りないため、実は、働く世代が納めている保険料からも「支援金」として投入される仕組みとなっていて、高齢者の増加にともない、この支援金が増え続け、働く世代の保険料が上がり続けることが課題となっています。

働く世代の負担増を緩和するため、昨年12月、政府がまとめた全世代型社会保障検討会議の中間報告は、後期高齢者のうち一定所得以上の人の窓口負担を2割に、と提言しました。

また、日本経済団体連合会、健康保険組合連合会などは、現在、1割負担の人のうち、所得が低い住民税非課税世帯を除く、すべての人(75歳以上全体の約52%)を原則「2割」に変えるべきと主張しています。

こうした中、19日に行われた医療保険部会で、厚生労働省は、窓口負担を「2割」に引き上げる場合、対象とする人について、5つの案を示しました。

19日に示された案は、高齢者本人の「年間の年金収入」が155万円以上、170万円以上、200万円以上、220万円以上、240万円以上、の場合にそれぞれ「2割負担」とする案となっています。

対象者が最大になるのは、年収155万円以上の人を「2割負担」とする案で、75歳以上の人の37%が対象となります。

19日、厚労省は、75歳以上の人の一般的な受診状況で試算すると2割負担に変えた場合、1割負担の際に比べ、外来、入院あわせて年間3万4000円の負担増になるという結果も公表しました。

厚労省は、また仮に「2割負担」に引き上げる場合には、外来を受診する際の窓口負担の増加額が、ひと月最大でも4500円におさまるようにする配慮措置を2年間行う案も示しました。

19日の会合では、日本商工会議所は、「働く世代の負担をこれ以上増やすと、個人消費にも影響し、少子化の加速も懸念される。高齢者には申し訳ないが、原則2割負担を早急にお願いしたい」と主張しました。

一方、これに反対する日本医師会は、「消費税増税は、医療、介護の安定のためと約束があったはず。社会不安を起こすようなことはやめていただきたい。導入するにしても、対象は、示された案よりも収入の多い人とすべき」と述べるなど、賛否、様々な意見が出されました。

対象範囲の詳細をどうするか、今後もこの部会で議論されます。