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イノシシが人里へ、農家に被害も…理由は?

2020年10月26日 20:14
イノシシが人里へ、農家に被害も…理由は?

野生のイノシシが山を下り、人里へ出没するケースが増えているといいます。26日も体長1メートルのイノシシが捕獲されましたが、作物が食べられるなど、農家の被害も広がっています。

千葉県南部の館山市。山の中にいたのは、野生のイノシシ。

体長1メートルを超える、大きなメスのイノシシがワナにかかっていました。駆けつけたのは害獣駆除を行う団体です。

特製の道具を使い、激しく暴れるイノシシと格闘。なんとか動きを止めると、イノシシを捕まえることに成功しました。

26日捕獲された2頭のイノシシ。実は今年、館山市では野生のイノシシの出没が、増えているというのです。

先月、市内で撮影された映像には、道路を横切るイノシシの群れが。

また別の日には、道路脇で体をぶつけあい、激しくケンカする様子も目撃されていました。

イノシシの駆除もする農家の早川さんは、今月初めに思わぬ場所でイノシシと遭遇。それは…。

イノシシと遭遇 早川満さん「うっすらと影だけが玄関の前に2つ見えたんです。初めてですね」

なんと自宅の目の前。そのときに撮影した映像。懐中電灯の明かりの先でうごめく黒い影がそのイノシシです。

早川満さん「掘り掘りというしぐさで、えさを探しているような状況でした」

2頭のイノシシは、エサを探すように庭を掘り返していたといいます。その後イノシシは…。

早川満さん「車の前を通りまして、ちょうどこの辺りまで2頭が来たんです」

家族が過ごす部屋のすぐ近くまで接近。危険を感じ、早川さんが捕まえようとすると。

早川満さん「いきなり突っ込んできまして。やばいと思って逃げて横にかわすと、そのまままっすぐ逃げていきました」

人里に出没することが増えたというイノシシ。

館山市によりますと、先月までの半年間で捕獲されたイノシシは、1000頭以上。例年の2倍以上のペースだといいます。

周辺の農家では…。

被害にあった農家「これゆうべ。きのうの夜」

畑に残されたのはイノシシに荒らされたあと。25日の夜、育てていたサツマイモやネギが掘り返されていたといいます。

被害にあった農家「農家はみんな困るでしょうね。どうしたらいいのかわかんない。不安ですよね」

いったい何が起きているのでしょうか。市の担当者の案内で山へ入ると。

館山市地域おこし協力隊 沖浩志さん「これは全部イノシシが食べたあとですね」

見つかったのはイノシシが食べたどんぐりの殻。

沖浩志さん「今年どんぐりが全国的に不作で。あまりどんぐりが落ちていなくて、山にエサが少ないので、人里の方に下りてきているような状態なのかなと」

しかし、今年はどんぐりが不作に。去年の台風や、虫がすみ着き樹木が枯れる「ナラ枯れ」などの影響で、どんぐりが減り、エサを求めてイノシシが人里へやってくるといいます。

また専門家は、最近の環境の変化を指摘。

宇都宮大学・農学部 小寺祐二准教授「近年は人間が森林の管理をする機会が減ってしまって、それによって人間の活動領域近辺の森林が豊かになってしまっている。その結果、住宅地等にイノシシが出やすくなってきていると考えられます」

人里に近い場所に、イノシシのすみやすい環境が増えているということです。人の生活圏に近づくことが増える野生のイノシシ。

市は、イノシシを見かけても不用意に近づかないよう、注意を呼びかけています。