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台風10号 気象庁の対応は適切だった?

2020年9月29日 15:33
台風10号 気象庁の対応は適切だった?

今月初め、九州・沖縄地方に台風10号が接近し気象庁は最大級の警戒を呼びかけました。当時の自治体などの対応や避難について社会部・災害取材チームの松野記者と振り返ります。

――台風10号では気象庁はかなり早めの段階から最大級の警戒を呼びかけていましたよね。

はい。台風10号が日本列島に最接近する4日も前から気象庁は「特別警報級の勢力で接近・上陸する恐れがある」として何度も緊急会見を開いて「最大級の警戒を」と呼びかけました。

――しかし、結果としては特別警報が出されるほどの勢力には発達しませんでした。これについて一部では批判的な声もあるようですね。

そうですね。SNSなどでは「大げさだった」とか「あおりすぎだった」といった投稿が一部で見られました。

――こうしたことについて気象庁はどのようにとらえているのでしょうか。

気象庁は台風の勢力が弱まった理由について「東シナ海からの乾燥した空気が台風に入り込んだため」と分析しています。

また、「台風は複雑な自然現象であり、わずかな環境の変化で勢力が変わったりする」と説明していて当時担当した予報官は「紙一重だった」と話しています。

さらに、「台風の進路の予想は向上している一方で、勢力の予想は非常に難しい」とも話しています。台風10号についてはアメリカやヨーロッパなどの予測でも当初から特別警報級の勢力を予想していたこともあり、気象庁は「決して大げさではなかった」という認識なんです。

――では実際に台風が接近した地域ではどう対応したのでしょうか。

宮崎県日向市の例では、台風が最接近する前の9月5日に災害対策本部を設置すると同時に避難所も開設してピーク時には1100人近くが避難しました。気象庁による呼びかけがあったことから前もって避難所開設の準備などをしていたそうです。

また、住民から避難場所を確認したいといった問い合わせが早い段階から寄せられたという自治体もありまして、住民一人ひとりが命を守るための行動を早めに取り始めていたようです。

――島での動きも取り上げられましたね。

そうですね。鹿児島県十島村では住民およそ200人が自衛隊のヘリで鹿児島市内に事前に避難しました。実際にお子さん3人と避難をされた住民の女性にお話をうかがいました。

自営業・竹内寿恵さん「避難してよかったですね。命が助かって良かったっていうのが一番にあるし島外に出られたっていう安心が一番大きいかなと思いますね。帰ってきたら被害が少なかったので結果的にはすべて良かったと思っています」

――現地の方々にとって避難は無駄ではなかったということもありますし、実際に呼びかけをしたことで安心、そして亡くなるという最悪な状況を免れたということにもつながりますよね。

そうですね。台風の予想と避難について、専門家は次のように話しています。

東京大学大学院・松尾一郎客員教授「予測の世界ですから空振りがあったにしても、適切な行動で命を守る、大事なことは、伝えられている情報に対して行動するということ。仮にその通りにならなかったとしてもこれは訓練だったと、年に1回の避難訓練だと思っていただきたいと思います」

台風10号では“紙一重”で台風の勢力が直前に衰えたケースとなりました。やはり、予測には限界があるんですね。我々は常に最悪の事態に備えて命を守る行動をとることが大切ではないでしょうか。