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菅官房長官はどんな人?政権の女房役の素顔

2020年9月2日 20:36
菅官房長官はどんな人?政権の女房役の素顔

ポスト安倍を選ぶ自民党総裁選で大本命とされる菅官房長官が、2日午後5時から会見し、正式に立候補を表明。政権の女房役に徹してきた菅さんとはどのような人物なのか。その素顔も含め解説します。
 
■秋田からのたたき上げ “苦労人”の過去

菅官房長官は、昭和23年生まれの71歳。当選回数8回のベテランで、第二次安倍政権の発足当初から官房長官として一貫して安倍総理を支えてきました。官房長官の在任期間は歴代最長です。 
 
老練な政治家というイメージですが、意外な一面として、実は大の“甘党”として知られています。お酒は一切飲めず、大好物はパンケーキ。ほっとしたときに食べるそうで、パンケーキを食べているときが一番幸せ、と話しています。 
 
座右の銘は「意志あれば道あり」。2世政治家やエリートとは違い、たたき上げでここまで上り詰めた“苦労人”としての側面もあるようです。 
 
菅さんのHPには、自らの生い立ちが漫画で紹介されています。秋田の農家の長男として育ち、農家を継ぐと思われていましたが、高校卒業後「東京で自分の力を試してみたい」と思い立ち、家出同然で上京。段ボール工場に就職したものの、大学で学びたいと働きながら勉強をしたということです。 
 
当時のことを菅さんは以下のように振り返っています。 
「東京に出て行けば何かいいことがあるだろうと東京に出て町工場で働いたんですけど、何もいいことがないのがわかった。現実は非常に厳しかった」 
 
大学卒業後はサラリーマンになりますが、「世の中を動かしているのは政治だ」と26歳の時に政治の道を志し、議員秘書になります。その後、横浜市議に立候補します。ただ、いわゆる地盤も看板も鞄もない中での出馬で、支援を求めて1日300軒歩き続けるなど、どぶ板選挙を展開しました。こうして横浜市議に38歳で初当選し、その後、国政にうつり今に至ります。 
 
■数々の政策を実現、一方で“忖度”文化を生んだという指摘

国交大臣政務官のとき、ETCの夜間割引やアクアラインの大幅値下げの実現に取り組みました。 
総務副大臣、総務大臣のときには、ふるさと納税の枠組みを作った“生みの親”でもあります。 
官房長官になってからは、観光政策で法務省などの反対を抑え込み、外国人のビザ緩和を決断。新型コロナ前まで外国人観光客が増えていたことの転換点になったと言われています。 
 
一方で、官邸主導型の政治スタイルを強力に推し進めたのも大きな特徴です。それまで各省庁の幹部人事は省が自ら決めていましたが、新たに内閣人事局を立ち上げ、官房長官が幹部人事を一手に握るようになりました。 
強大な人事権を利用し、官邸が実現したい政策に反対する官僚は遠ざけ、従う官僚を重用してきました。こうしたことから、官僚が萎縮し、官邸を向いて仕事をする、いわゆる“忖度”文化の土壌を生んでしまったと、その弊害を指摘する声もあるのです。 
 
こうした官邸主導型のスタイルに元幹部官僚からは「官房長官が何千人に近い人間の人事を事実上仕切っている。官僚機構に最大のクライシスが訪れている」といった批判の声も上がりました。 
 
ただ、こうした声に対して去年、菅さんは、このように反論しています。 
 
「私はマイナスっていうのはないと思います。やはりプラス面の方が圧倒的に大きかったと思います。忖度して萎縮しているとか言われていますけど、少なくとも方向性を出すのは官邸がいいでしょうね。そこでまとめて、あと方向性が出たらそれぞれの役所にしっかりやってもらう。方向性を決めるのは政治だと思ってますから。決めたら従ってほしい」 
 
政治が決めたら官僚は従ってほしい、と言っていました。 
 
■ポスト安倍 それぞれのキャッチフレーズは

ポスト安倍選びの自民党総裁選は、菅官房長官、石破元幹事長、岸田政調会長の3人で争う構図となっています。 
 
それぞれキャッチフレーズがあります。 
岸田さんは「分断から協調へ」。 
「新型コロナウイルスにより、経済や社会の分断が深まりつつある」と主張し、国民の協力を引き出せるリーダーを目指したいと言っています。 
 
石破さんは「納得と共感」。
「誠実に謙虚に真正面から逃げることなく諸課題を訴え、国民の納得と共感のもとに政策を実行する」と訴えています。 
 
菅さんは「安倍政権の継承」。 
会見で新型コロナの感染拡大防止策と経済活動の両立を強調するとみられています。 
 
これまでは安倍政権のスポークスマンに徹し、自らの意見や思いを公の場で語ることはほぼなかったのですが、今後は国を率いる総裁候補として自らの言葉でどのようなビジョンを語るのか、注目です。 
 
党員投票をやらない今回の総裁選は、始まる前からすでに出来レースの感が漂っています。本命視される菅さんは安倍路線を継承する立場ですが、それは同時に、数々の疑惑に対して説明責任を果たしてこなかった負の遺産も抱えていることを意味します。そうした国民の疑問に対しても、真正面から答えてほしいと思います。 
 
(2020年9月2日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)