×

藤井聡太棋聖 人間とソフトでは構造が違う

2020年7月23日 8:00
藤井聡太棋聖 人間とソフトでは構造が違う

「将棋というのはどこまで強くなっても終わりがない」――。史上最年少でタイトルを獲得した藤井聡太棋聖(18)が、日本テレビの単独インタビューに応じました。初戴冠の所感から「AIと将棋」、18歳の抱負まで、大いに語りました。聞き手は桝太一アナウンサーです。


■人間は感覚的に指し手を取捨選択できるのが強み

――改めて棋聖戦を振り返って。

「棋聖獲得後に対局もありましたし、棋聖という肩書きで呼んでいただく機会も何回かあったので、徐々に実感が湧いてきたのかなと。4局通して渡辺先生にこちらが気づいていない好手を指されるような場面もあって、番勝負を通して非常に勉強になりました」

「第1局で非常に難解な将棋でしたが、そこを結果的に勝てたところで、こちらとしては第2局以降いい状態で臨めたのかなと。第3局は本当に(渡辺二冠に)うまく指されて完敗と言える内容でした。少なくともその内容はしっかり反省して次に生かせればと思っていました」

――棋聖戦第二局での藤井七段が指した一手「3一銀」。AIが6億手読んでようやく最善手であることがわかったという話もあり、話題になりました。

「手が広い、候補手の多い局面ではありましたが、ある意味自分の特徴が出せたところはあると思います。自分なりにその局面をしっかりとらえて指せたことはまあ良かったのかなと。あの局面では激しく攻め合う方針の手もありましたが、実戦の指し手(3一銀)は相手からそれを受け止めて、そのあと反撃に移ろうと。そういう方針のもとに読んでいった結果の手だったかなと思います」

「手が広いので、手の善し悪しというのは難しいですが、自分の特徴が出せたとしたら良かったのかなと思います」

――藤井棋聖はAIも練習の中に取り入れている。

「ソフトの考えを参考にすることで、新しい可能性が見えてくる。自分の将棋の課題や癖のようなものが見えてくるところがあるので、そういったソフトの考えを自分なりに解釈して成長できたなとは考えています。練習として自分で(AIと)指すということはありますが、基本的に自分の読み筋や判断と照らし合わせて参考にすることが多いですね」

――AIと人間どっちが強いかという話題もあります。

「2017年に当時の佐藤天彦名人と将棋ソフト「ポナンザ」の対局がありました(ポナンザが2連勝)。そこで将棋ソフトの強さというのが示されたのかなと考えています。これからは、対決とはまた違った形での関わりになると思っています」

「人間とソフトでは構造が違うというか、人間は感覚的に指し手を取捨選択できるのが一つの強みかなと思っているので、そういった判断力を自分としても強化していければなと思っています」


■25歳前後が一つのピーク

――藤井棋聖の強さの源は?

「強くなるための方法っていうのは人それぞれ。自分の場合は昔から詰め将棋をよく解いてきたので、それが自分に合っていたのかなとは思います。(この数か月は)家にいる時間が長くなりましたけど、その間に自分の将棋を見つめ直して、改善できるところがあればそこを改善していこうという風に取り組んでいました」

「普段ですと対局が週に1回程度あるので、どうしてもそちらを意識せざるを得ないところがあります。今回は公式戦がしばらく空いたので、より一つのことに対してじっくり取り組めたという面はあります。基本的に棋力が急激に伸びるということはなかなかないですが、自分としては、成長できたというのはあるかなと」

――18歳になられたばかりです。

「18歳となると一応選挙権などもあることになるので、そのあたりの自覚はしっかり持ちたいなとは思います。(18歳の抱負を色紙に「探究」としたため)今回の棋聖戦、王位戦で本当に将棋の難しさを多くの場面で感じたので、これからも盤上に対して、探究心を持って日々取り組んでいきたいと思っています」

「羽生(善治)先生も25歳で七冠をとられていますし、その前後というのは一つのピークといえると自分としては思っています。そういった時期に向けて、より強くなれるように頑張っていきたいと思っています」


■はっきりとした頂上は見えない

鉄道好きとして知られる藤井棋聖。インタビューの冒頭、日本テレビからのプレゼントとして鉄道模型が渡されると笑顔を見せました。

――タイトル獲得と誕生日を迎えられたばかりということで、日本テレビの方からささやかながらプレゼントを。何かおわかりになりますか?

「はい。これは貴重な。(『おはようライナー』の)189(系)ですよね。乗る機会がないまま(昨年)引退になってしまったのが、少し残念です。自分が住んでいるのが愛知県なんですけれども、JR東海の管内は国鉄車がないので。近いところを走っている国鉄の特急型車両で、一度乗ってみたいなというのは思っていました」


「自分は電車に乗るのが好きですが、将棋の対局でも全国各地でやることがあるので、鉄道に乗る機会があるのは楽しいですね。最近ですと、東海道新幹線の新型車両のN700Sがデビューしたので、機会があれば一度乗っておきたいなと思っています」

――藤井棋聖の最終目標。最後に到達していたい地点はどういう場所?

「将棋というのはどこまで強くなっても終わりがないので、そういう意味でははっきりとした頂上というのは見えないですけど、ただ自分としてはできる限り強くなりたいという思いは常に持っています」

――これからの子供たちに藤井棋聖から送りたいメッセージはありますか?

そもそも将棋というゲームに出会って、それが楽しくて夢中にやってきたというのがここまでつながったと思っているので、そういった自分の好きなことに全力で取り組んでみてほしいなというふうに思います。