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コロナ生活苦…寄付で命守る取り組み タイ

2020年5月29日 5:22

新型コロナウイルスの影響で東南アジアのタイでも生活困窮者が増えています。寄付文化の浸透したタイでは、市民の力で命を守る取り組みが行われています。

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首都・バンコクにあるマンションの一角。お米にインスタントラーメン、袋の中身はすべて寄付で集まったものです。

支援団体・アンナさん「一番必要なのはお米です。お米をもらってすごくうれしいと言われます」

支援団体のアンナさんたちは、新型コロナウイルスの影響で生活に困っている人たちへ週3回ほど食料などを配っています。

3月中旬から経済活動を規制してきたタイ。タイ商工会議所は、感染拡大を抑え込んだとしても、およそ300万人が職を失うとしています。政府は影響を受けた人を支援するため、低所得者らを対象に給付金を用意しました。

しかし、なぜか強い批判の声が――。

女性「なんで金のネックレスを持っている人が(給付金を)もらえて、私はもらえないの」

不満を訴えているのは給付金をもらえなかった女性です。政府の給付金には、当初の想定の10倍近い2900万人が申請。対象枠は拡大されましたが申請者の半分ほどしか受け取れず、支援が行き届いていないとの批判が広がっています。そのため、生活に困った人への手厚い支援が求められています。

アンナさんたちは高齢者や障害のある人が多く住む貧しい地区へ。実は、アンナさんは航空会社の客室乗務員ですが、運航が減り仕事がありません。自身が苦しい中でも支援活動に参加した理由は、仏教国のタイで浸透する、ある考えが関係しています。「タンブン」と呼ばれる文化で、ほかの人へのよい行いは自分の幸せになって返ってくるとされています。

支援団体・アンナさん「今みんな影響を受けていると思いますが、分かち合えたり、できることがあれば、お互い協力し合うことが大事」

こうした支援の輪は広がりを見せています。「バンコク・ヘルプ」というサイトでは、食料や服などを寄付する人たちが配布の情報を掲載しています。情報のあった場所に行ってみると――。この日、準備をした150食は、わずか10分ほどでなくなってしまいました。

男性「仕事を見つけるのは難しいんですよ。あったとしてもまれです」

女性「みんなで助け合ってこの状況を乗り越えていきます」

さらに最前線で闘う医療従事者にも。タイのホテルチェーンは、市民からの寄付金で弁当を作り、病院などに届ける取り組みを始めました。

ホテルチェーン広報担当者「医療従事者に栄養のあるおいしい料理を食べてもらいたい」

文化として根付いてきた助け合いの精神が苦難を乗り越える救いとなっています。