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治療薬「アビガン」今月中の承認は難しい

2020年5月20日 18:43

新型コロナウイルスの治療薬として、政府が早期承認を目指している「アビガン」について、今、行われている臨床研究で「有効性を判断するには時期尚早」との中間解析が出され、今月中の承認は難しいことがわかりました。

アビガンは富士フイルム富山化学が開発し、既存の薬が効かない新型インフルエンザが発生した場合の治療薬として政府が備蓄しています。安倍総理は、これまでにアビガンについて、新型コロナウイルスの治療薬としての有効性が確認されれば「今月中の承認を目指す」と述べていました。現在、薬の承認に必要なデータを集めるため、複数の臨床試験などが行われています。

そのうちの一つが愛知県にある藤田医科大学が中心となって、行っている「特定臨床研究」です。新型コロナウイルスに感染した軽症患者や無症状の人86人が対象で、このうち43人にはアビガンを、入院当日に飲んでもらい、別の43人には入院6日目に飲んでもらい、それぞれアビガンを飲んでから6日目の時点で、ウイルス量がどれほど減ったかを調べ、有効性があるか評価するものです。

関係者によりますと、この研究について中間解析では「有効性の判断には時期尚早」とされ、研究をさらに続けることになったということです。藤田医科大は、結果が出るのは8月末だと話しています。

一方、これとは別に、富士フイルム富山化学も臨床試験を行っています。およそ100人の患者に、「アビガン」そのもの、または、「プラセボ」という特に効き目のない錠剤を、患者本人には、どちらとは知らせずに、飲んでもらいPCR検査で陰性になるまでの期間などを比較します。富士フイルム富山化学によりますと、この臨床試験の結果が出るのは6月末だということです。

これらのことから、アビガンについて、政府が目指す今月中の承認は難しい状況です。

日本医師会の新型コロナウイルス有識者会議は、アビガンを念頭に、「有事といえども科学的根拠の不十分な候補薬を、治療薬として承認すべきでない。重症化例の一方で自然軽快もある未知の疾患を対象とする場合には、症例数の規模がある程度大きな臨床試験が必要となる」などという緊急提言を発表しています。