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「9月入学」案 メリット・デメリットは?

2020年4月29日 23:14
「9月入学」案 メリット・デメリットは?

学校の新学期のスタートを、4月から9月に変更する意見が急浮上しています。新型コロナウイルスの影響で全国9割の学校が臨時休校し、4月になっても新学期が始まらない中で、各地の知事から声があがっています。

■「9月入学」メリットとデメリットは?

「9月入学」の主なメリットとデメリットを整理します。

【メリット】

(1)留学
海外では秋入学が主流で、世界標準となっています。日本の入学時期が9月になると、日本から海外へ留学しやすくなり、海外からの留学生も受け入れやすくなります。

(2)受験
9月入学になると受験の時期も夏になり、雪で交通機関が乱れて発生する受験トラブルも少なくなります。受験が天気に左右されにくくなるメリットがあると言えます。

(3)教育
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休校期間が長引いています。緊急事態宣言が延長されたり、一斉解除とはならなかった場合、学校の再開時期が日本各地でばらつき、学習の進み具合に差が出る懸念も。しかし、9月入学にすることで、そうした地域差の解消につながるという指摘があります。

【デメリット】

(1)就職
今は4月入社が一般的で、学生も採用側もその前提で準備などをしています。特に公務員試験などは3月の卒業に合わせており、9月入学となれば調整が必要です。

(2)会計年度
国や地方自治体の会計年度は4月から3月で定着しており、9月入学となると会計年度との調整も必要となります。

(3)習慣
そして、卒業や入学は「春」というイメージがあります。特に、春といえば出会いと別れの季節であり、卒業ソングなども春や桜とからめた歌詞が多いです。そのような習慣がある中で、国民の理解を得られるのかとの指摘もあります。

■安倍首相「さまざまな選択肢を検討」 政権内には慎重論も…

実は、欧米の大学をモデルに設立された日本の大学は、大正10年ごろまでは秋入学でした。しかし、会計年度に合わせて入学時期を春に変更した経緯があります。秋入学はこれまで何度も検討されてきましたが、実現することはありませんでした。

29日に開かれた全国知事会では、「9月入学」が議題に。9月入学の導入を求める宮城県の村井知事は「おそらく賛成意見・反対意見いろいろあったと思いますけど、若干の文言の修正があったとしても、この趣旨を外さないような形で必ず残していただきたい。これを強く強く要望したい」と話しました。

一方で、反対意見も。愛媛県の中村知事は「性急な導入には反対」とする意見書を提出。その理由について「今は感染拡大阻止や医療体制の整備に集中すべき」「現役の学生や採用する企業にも大きな混乱や負担を招きかねない」などとしています。

9月入学に関して、政権内には慎重な声があります。

ある官邸関係者は「経済界をはじめ困るところはたくさんある。足並みがそろわないと。関係者といろいろ調整する必要があり、簡単にはいかない」と述べ、厳しい目線を持っています。さらに、どうしてもやるなら今年限りだとも話していました。

29日の国会で、質問を受けた安倍首相は以下のように答えました。

「子供たちや保護者はもとより、社会全体に大きな影響を及ぼすのだから慎重にという意見もあることは十分承知をしておりますが、これぐらい大きな変化がある中においてはですね、前広にですね、さまざまな選択肢を検討していきたいと考えております」

■教育現場の声は?

実際に子どもたちと向き合っている学校の先生は、どう感じているのでしょうか。

ある私立の中高一貫校の教員は、
「新型コロナの影響でまともに学校がスタートできてないから、改めて9月からやり直すのもありかと思います」と述べています。

一方、別の公立小学校の教員(女性)は、
「初年度の受験生は絶対教育格差が出てしまう。とにかく現場の立場としては早く決めてくれ。従うから、宙ぶらりんの状態だけはやめてほしい」と悲痛な声を上げました。



いま休校になっている子供たち、学生、先生方などの現場の声に耳を傾けて、十分なサポートをしていただきたいと思います。

※2020年4月29日放送 news every.『ナゼナニっ?』より