×

「食わず嫌い」をなくす災害への対処

2020年3月10日 16:38
「食わず嫌い」をなくす災害への対処

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今日のテーマは、「自然災害リスク 企業の対応は?」。ニューラル代表の夫馬賢治氏に聞いた。

帝国データバンクが行った調査によると、自然災害に対する経営上のリスクへの対応について「進めている」と答えたのが27%だったのに対し、「進めていない」と答えたのが66.4%にのぼった。

ネット上では…

「備蓄食料はあるが緊急時マニュアルはない」
「大きな災害起きたらパニックになりそう」
「のど元過ぎれば熱さ忘れるということか」

などのような意見があった。


――夫馬さん、明日で東日本大震災から9年となりますが、この結果をどうご覧になりますか。フリップをお願いします。

今回は「食わず嫌い」と書きました。

災害と「食わず嫌い」にはどういう関係があるのか、私が書いた背景をお伝えしたいのですけれども、自然災害が起きますと当然、住民の皆さんも困りますが、企業にとっても大きなダメージになります。

例えば食料の問題、物流の問題、それからいろんなインフラの問題ですね。災害が起きて企業がいろいろな事業をできなくなると、ますます社会が混乱していくという状況になりますので、災害が起きたときにいかに自分たちの事業を継続していけるか、これに非常に注目が集まってきている状況です。

先ほどESGの話題を出しましたけれども、投資家から見ても、「S」という観点ですね。災害が起きても事業が続けていけるように企業がテレワークを進めていこうという考え方は、実はもう数年前から投資家さんの間でも、企業を見るうえで非常に重要になってきております。


――環境、社会、企業統治の社会の部分が大きく変わっていくということですね。

先ほどの数字でも、まだまだ災害対策が進んでないというお話でしたけれども、ちょうど今日本では新型コロナウイルスという形でこのテレワークには注目が集まっている分野でございます。ここで「食わず嫌い」出て来てまいりましたけれども、今まで日本の企業では「テレワークが進められない」と。


――「直接会議した方が」「直接取引先に行った方が」そういう話でしたよね。

ありましたね。まさに「食わず嫌い」の現象が起きていたと思っていまして、実際にテレワークを始めてみたところ、案外、事業が進みますし、お客様とのコミュニケーションもテレワークで進められたじゃないかというような言葉がありました。ですので、どんどん、これから食わず嫌いをなくして、災害対策をしていくためには何を本当に変えていかなくちゃいけないのか、長期的な目でいろんな取り組みを始めていただければなというふうに思います。


――ESGの中で「G」というのは企業統治ですけれども、この企業統治というのはやっぱり環境や社会に大きく関わってくる何かがあるんですか。

おっしゃる通りですね。今の自然災害も将来を見ていきますと、残念ながら気象庁からも「これから台風が大きくなる」「豪雨が降る」ということは予想されています。長期トレンドを見たときに、この環境社会の分野で何を始めていくべきか、これを担保する取締役の方がいるかどうかですよね。これがガバナンスの中では重要になっていまして、社内にいないのであれば、社外取締役の方に来ていただいて、企業のガバナンスレベルをあげていきましょうというのが最近の投資家からの視点になっています。


――昔の考え方が今も通用しなくなっているんですね。あと、世界は先にどんどん進んでいる。これは上層部がそういう考えにならないとなかなか…。

おっしゃる通りですね。私も海外の友達がたくさんおりますけれども、多くの方が最近テレワークを進めています。このテレワークが進んでいるという感覚を取締役の方が持てるかどうか、これが投資家が企業を見る目になってきているということですね。


――そして最後に、明日で3.11から9年となります。大災害となった時は今度ライフライン、いわゆる電気などは使えなくなりますよね。テレワークがそのまま自宅などでできるのかなとそういった懸念もあるんですね。

テレワークを始めるのは本当に最初の一歩ですね。今、先進的企業はどこまで来ているかというと、テレワークを続ける上でも、「災害起きたときに自分たちの電気はどうなるのか」「自分たちが頼っているデータセンターはちゃんと非常電源があるのかどうか」「そもそも洪水が起きないのかどうか」、こういうところも判断した上で、自分たちの事業の場所を決めるようになってきていますので、まず最初はテレワーク、その次は災害が起きたときにテレワークを続けるためには、何が必要かということを考えていく必要がでてきています。


――会社員たちがみんな安心して生活できる、そして仕事ができる環境を整えるということが大事なんですね。


■夫馬賢治氏プロフィル
ESG投資に関するコンサルティングやアドバイス、またニュースサイト「Sustainable Japan」の運営などをてがけている。ESG投資とは環境・社会・企業統治に配慮した経営を行い、金銭的なリターンと社会の持続可能性の両立ができているか評価して行う投資。夫馬氏がESGに注目したのはアメリカに留学した時、大企業が持続可能性を掲げながら、長期の経営目標を打ち出す様子に感銘した。帰国後まもなくニューラルを設立。日本企業の将来に対してESGの重要性を訴えている。

【the SOCIAL opinionsより】