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北朝鮮への観光事業 韓国が独自に再開模索

2020年2月28日 5:30

非核化をめぐるアメリカと北朝鮮の交渉がこう着する中、今、韓国が独自に北朝鮮への観光事業を始めようと意欲をみせている。その背景とは。

韓国北東部の街・高城。今月、地元政府が、南北の軍事境界線近くから北朝鮮側の名峰・金剛山を臨む展望施設に外国メディアを招いた。参加者の中には、かつてアメリカ国務省で6か国協議の首席代表を務めたクリストファー・ヒル氏や世界的な投資家ジム・ロジャーズ氏の姿もあった。

ジム・ロジャーズ氏「ここは10~20年で、世界で最もエキサイティングな場所になるよ。38度線を開放して、そこでKPOPコンサートをやったらいい」

地元政府を挙げての観光アピール。背景にあるのは、文在寅大統領が打ち出した新たな政策だ。

文在寅大統領「“個別観光”のようなものは国際制裁に抵触しないため、十分に摸索できると考える」

停滞するアメリカと北朝鮮の交渉とは別に、独自で北朝鮮への観光事業を再開させ、南北関係の改善を図ろうという。

韓国は2008年まで、北朝鮮の金剛山に団体観光を行っていた。しかし、「入山料」として北朝鮮側に直接、多額の現金が流れるため、今は国連制裁に抵触する。そこで、文政権は「個別観光」という形を模索している。1つは、韓国人観光客が中国などの第三国を通じて北朝鮮ビザを取得し、観光を行うというもの。もう1つは、朝鮮戦争で生き別れた離散家族による「個別観光」だ。

金相浩さん(78)は10歳のとき、北朝鮮に祖父を残して両親らと韓国側に移り住んだ。

金相浩さん「(祖父が)『1人でどう生活するのか、私たちは親不孝だ』と父が涙ぐむのを見ました」「私の故郷に行くのを止める理由はありますか」

韓国政府はこうした離散家族を対象に、金剛山など北朝鮮に訪問してもらうことも検討している。

地元政府もこうした動きに期待を寄せる。

韓国江原道・崔文洵知事「米朝間に生じたギャップを埋める“橋”として考えているのが個別観光だ」

かつて金剛山観光の拠点として栄えた街。観光客が減少する中、地元政府としては、観光の再開で再び客を呼び込みたい狙いもある。高城には6億円あまりを投じ新たな展望台がつくられた。古い展望台は近く、北朝鮮風のレストランに改装される予定。

しかし、アメリカはこうした韓国独自の動きをけん制している。

ハリス駐韓大使「北朝鮮関連のどのような計画も、韓国はアメリカと協議すべきだ」

さらに、北朝鮮は韓国側の提案に今のところ何の評価も示さず、沈黙している。また、新型コロナウイルスへの対策で外国人の入国を完全に停止している状態で、文政権の思惑通り観光事業が進むのかは不透明。