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医師偏在に挑む 過疎進む伊豆の週末診療所

2020年1月28日 14:13
医師偏在に挑む 過疎進む伊豆の週末診療所

遠くから、医師自らが出向く週末診療所。

週末2日間だけでも開けていれば、喜んでくれる人がいる。そう信じるのは、眼科医・大高功さん。過疎に悩む地区で、診療所を開いています。

大高さん「若い先生とかで腕を磨きたい人は、もっと田舎を目指してもらいたいね」

平日は横浜の眼科診療所まで通勤。週末になると、自宅がある静岡市からフェリーで西伊豆眼科クリニックへ。休日は医学論文に目を通します。

大高さん「都会でないと情報が遅れるからとか言ってるやつは、そんなの遅れてるよ、今どき。むしろ田舎で難しい症例に当たって、一生懸命考えるっていうような癖をつけると、すごい実力がアップすると思うね」

伊豆市土肥地区の公共交通は路線バスのみ。この診療所ができるまで、お年寄りなど多くの患者はバスで峠を越え、1時間半かけて通院していました。

大高さん「医師不足と違って医師の偏在なんよね。都市部に医者がいっぱいいて、田舎部に医者がいない。動ける人間がやっぱり動くしか、医師の偏在を解消する方法は、僕はもうないと思ってる」

強い雨と風でフェリーが欠航したこの日。大高さんは新幹線と私鉄を乗り継いで西伊豆へ向かいました。峠を越え、2時間半かけてようやく診療所へ。たくさんの患者が大高さんの到着を待っていました。

患者「大変でしたね、先生」

診察開始は遅くなりましたが、患者は温かく迎えてくれました。

患者「先生もらってって。これ菜の花。あんたが倒れてくれちゃ困るんだ、ほんと。だからね長く続けられるように来て」

大高さん「はい、頑張ります」

たとえ土日だけでも、診療所があることで地域の人たちは安心して暮らせます。

目の中の水晶体が濁る病気、白内障。この日、手術を受けた、香水ゆき枝さん。25分かけ、無事に終わりました。翌日、術後の経過を診てもらうために診療所を訪れました。

大高さん「手術は正直完ぺきやな」

香水さん「はい、ありがとう」「先生ね、こんなの私作ってるの。だからね、目がよく見えるようになるのが楽しみなんだけど」

大高さん「うわぁ、すごいやんこれ」

香水さん「だからもらってもらえますか」

医師の偏在に挑む大高さんを、こうした患者の笑顔が支えています。

手術から2か月近くがたち、ゆき枝さんの視力は1.0まで回復。大好きな紙細工ができるようになりました。

※2009年7月、静岡第一テレビで制作したものをリメイク

【the SOCIAL×NNNドキュメントより】