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シティ・プロモーション 広報でファン作る

2020年1月17日 16:45
シティ・プロモーション 広報でファン作る

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「シティ・プロモーションの課題」。埼玉県三芳町秘書広報室主査の佐久間智之氏に話を聞いた。

シティ・プロモーションとは、「認知度の向上」や「移住・定住人口の獲得」を目的に、自治体が専門の部署などを設けて自らプロモーションを行うことで、近年、多くの自治体が力を入れはじめています。

学校法人先端教育機構 事業構想研究所が、全国167の自治体に行ったシティ・プロモーションの課題についてのアンケートによると、「プロモーションの予算が、効果を出しているか?」という問いに対しては、「大幅に改善の余地がある」が27%、「少し改善の余地がある」が56%とあわせて8割以上の自治体が、予算について改善の余地があると回答しています。

また、「プロモーション活動を行うにあたっての課題」については回答の多い順に「財源不足」、「担当者のスキル不足」、「担当者の人手不足」、「他部局との連携不足」といった回答となっています。

この話題について佐久間さんのご意見をうかがいます。


――まずはフリップをお願いします。

「広報でファンを増やす」と書きました。

自治体広報紙というのは必ずご自宅に届く、絶対届くものなので、それをプロモーションとして生かせるだろうと。魅力のある広報誌を作ることで、町のファンを増やすきっかけになるのではないかと思い、こちらのキーワードを書きました。

――広報誌を通じてということですが、具体的にどんな改善を行っていきましたか。

以前の『広報みよし』はよくある自治体広報誌みたいなもので、今の広報誌がどういう形かというと、先ほどもお見せしましたが、全然違うと思います。具体的にいうと写真を工夫したり、僕自身のスキルを上げるためにいろいろと努力をしました。

――どんなことをされましたか。

別にデザイナーのキャリアも何もないですが、独学で広報誌作りをやってきました。全国の広報を取り寄せて勉強する、あとは妻が読んでいるファッション誌から写真を見たり、デザインをみたりと、分析をしてここまで作り上げることができました。

――いろんな雑誌を読まれて、センスや見え方も研究されたのですね。

研究をしていってこういった新たな形の広報誌を作ることができました。

――本当に見た目がスタイリッシュなのですが、コストはその分かかるのではないですか。

それが、以前の広報誌は当時1100万円ぐらいかかっていたのですが、今年度は530万円ぐらいなので、半減しています。

――どうしてコスト削減ができるのでしょうか。

内製といいまして、写真からデザインからテキストを書く、取材といった作業を全て僕がほぼ1人で今までやっていて、あとの作業もチームとして後輩と一生懸命やって、職員の手作りで作っている。公務員でもここまでできる。手作りでやるから、予算も半減することができました。

――外注ではなくて自分たちでやることでそこまでコストが削減できたのですね。でもそうなると業務量は増えてしまいそうなのですが…。

実は、印刷屋さんに頼んでいたときはすごくやりとりに時間がかかっていました。今は手作りでソフトを使ってやっているので、原稿が来たときにすぐ見た目で直して、その場でプリントアウトして作業を終えられるので、タイムラグがすごくなくなりました。その分をほかの業務にあてることができるので、実は内製化にした結果、定時で帰ることができています。

――まわりからの反響もありますか。

住民の方から「よく手に取って読むようになった」とか、全国から取り寄せをしていただいたり、あとは町からの転出者がちょっと減っていっている。また、ふるさと納税が600万円から2億円超えるぐらいまで増えました。これは広報誌が要因かどうかはわからないですが、町のファンが増えている実感があります。

■佐久間智之氏プロフィル
埼玉県三芳町秘書広報室主査。プロを目指したバンド活動に見切りをつけ、24歳で埼玉県三芳町の職員に。ある日、読まずにゴミ箱に捨てられた町の広報誌に衝撃を受け、広報誌の担当を志願。「広報誌は、町の名刺」、ダサいのはいやだと、デザイン、写真など自ら独学で習得し、広報誌をリニューアル。おしゃれでスタイリッシュなデザインで2015年には全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞。去年は、『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019』にも選出。現在は、民間企業に出向するかたわら、講演や執筆活動も行う。「広報はラブレター。想いを届けて、まちに恋してもらうもの」。

【the SOCIAL opinionsより】