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病児を抱える親に、笑顔を届けるためには

2019年12月27日 15:59
病児を抱える親に、笑顔を届けるためには

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「病児を抱える親の苦労」。病気の子どもや発達がゆっくりな子どもを育てるお母さんと家族を応援するNPO法人キープ・ママ・スマイリング代表、光原ゆきさんに話を聞いた。

医療、福祉関係者のための情報サイト「ナーシングプラザ」が実施したアンケートによると、保護者として子どもに入院経験がある人に「入院生活を支援する中で、治療以外で困ったことは何でしたか?」と聞いたところ…。

一番多かった答えは、「家族と離れて過ごす寂しさ(28.8%)」、つづいて「宿泊での付き添いに関する負担(28%)」、「面会のための時間や距離の負担(20.2%)」となっています。

また、「子どもの長期入院に必要だと思うサポートは、何ですか?」という問いには、

「本人の心のサポート(82.2%)」に続き、「保護者のサポート、相談受付(54.6%)」となっています。

病気の子どもを持つ親の苦労と、どのような支援が必要なのか、光原さんのご意見を伺います。


――まずはフリップをお願いします。

「おいしいご飯でママを笑顔に」と書きました。

子どもの入院に付き添って病院に一緒に泊まり込んだことがあるのですが、私自身も倒れた経験があります。私たちの団体が以前調査した結果では、1か月以上入院に付き添った経験のある方の72%が体調を崩した経験があるというデータがあり、付き添い者の環境はとても過酷です。

食べ物・睡眠などいろいろ大変なことがあるんですが、特に私自身も一番大変だったのが、食べ物でした。病気の子どもには病院のご飯が出ますが、付き添っている家族には病人ではないので、多くの病院ではご飯が出ません。で、どうしているのかというと、子どもがちょっと寝た隙などに走ってコンビニに買いに行くなど、なかなか調達するのも大変で、食べる時間もなかなかない。そういう状況ですので、私たちはご飯の面から付き添いのご家族を応援するという活動をしています。

――具体的にはどのような取り組みをされていますか。

団体設立時からずっと、入院している子どもに付き添っているご家族向けにお弁当やご飯を作ってお届けをするという活動をしてきました。このほど、もっと多くの全国の小児病棟にいるご家族を応援したいという思いから、ずっとお世話になっているシェフの方に監修をしていただき、シェフのレストランの味を付き添いのお母さんたちにお届けする缶詰を今回作りました。お母さんたちを応援する気持ちを込めて、レストランの味を全国に届けていきたいということで、今は佐賀大学病院から配布がスタートしています。

――もう実際に配布されているんですね。ちょっと手に取らせていただいてもいいでしょうか。

(実物の缶詰を手渡して)はい、どうぞ。

――大豆ミートのキーマカレー。すごくおいしそうです。

本当においしいです。めし上がった方からは「缶詰と思えない」というコメントをいただいているくらい、とてもおいしいです。

――(モニターを見て)お写真がいま後ろに出ていますね。全部おいしそうです。

普通に食べたい・買いたいという声もたくさんいただいています。 

――とってもおいしそうで、私も食べたいです。このご飯だったらいろんな人を元気にできそうですね。

めし上がったお母さんたちからも、本当においしいし、自分たちのために配ってくれたことがうれしいというお声をいただきます。

――こころの栄養にもなるんですね。また食事面以外では、どんな課題があると思いますか。

本当に食以外にも睡眠であったり、環境という意味ではたくさん課題があるのですが、私がいくつか付き添った病院でもそれぞれ違いました。なので、全国の付き添い者のおかれている環境を把握するための調査を聖路加国際大学の大学院と一緒に今週から始め、2月末まで調査を行っています。ぜひ付き添い経験のある方は、私たちのホームページから回答できるのでお答えいただきたいと思っています。

私たちは調査を通して、お母さんたち、付き添いの方がよりよくいられる環境を作りたい。その根本は、子どもが元気になるにはやっぱりお母さんが笑顔でいるのが一番ということで、お母さんが笑顔で子どもに向き合える環境を作るようにやっていきたいなと思っております。


■光原ゆきさんプロフィル
NPO法人キープ・ママ・スマイリング代表。自身の体験から子どもの入院に付き添う家族を食事面で支援しようと、NPO法人「キープ・ママ・スマイリング」を設立。長期入院中の子どもの家族のため夕食作りボランティアを開始。2018年からは、小児病棟で付き添う家族に食事を差し入れる「ミールサポート」を聖路加国際病院にてスタート。さらに、2019年は、おいしい食事を全国に届けようとオリジナルの缶詰も開発した。病気の子どもや発達がゆっくりな子どもを育てるお母さんと家族を応援する。

【the SOCIAL opinionsより】