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ESG投資が私たちの日常にもたらす変革

2019年10月21日 16:22
ESG投資が私たちの日常にもたらす変革

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「環境省、ESG投資を後押し」。ニューラル代表の夫馬賢治氏に聞いた。

今月4日、環境省はESG金融の普及・拡大に向け、環境・社会に優れたインパクトを与えた投資家・金融機関等を評価・表彰する「ESGファイナンス・アワード」を創設すると発表した。ネット上では「ESG投資が当たり前になる!?」「気候変動対策がメーンだね」「ESG投資も行き過ぎれば反動もある」などの意見があった。


――まずはフリップをお願いします。

『21世紀型資本主義』と書きました。これは、少し状況をさかのぼって考えるとですね、実は昔、資本主義というものは非常にNGOの方々から批判された時期がありました。例えば、環境を破壊してるんじゃないかとか、労働者から搾取しているのではないかと。実はこのように、以前は資本家・投資家とNGOというものは対極のような存在ではあったんですけれども、この『21世紀型資本主義』、すなわちESG投資の世界では最近、資本家とNGOとの距離は非常に近くなっておりまして、企業がどのような社会環境課題にちゃんと対応できていくのか、さらに言うと、また解決でき、役に立つのか、そのあたり、投資家は気にするようになってきているのが、新しい資本主義の考え方ということができるかなと思います


――最近は、さらに進んだ関係っていうのもあるんですね?

そうですね。例えば、気候変動というテーマがあります。先ほども少し異常気象や自然災害の話を出しましたけれども、これからどんな変化が起きていくのかということにNGOの方も積極的に考えられてますし、実は投資家の皆さん、主流の投資家ですね、例えばウォール街を動かしている、ああいう投資家の皆さんが非常に関心を持ってきています。ですので、その裏側で、実はNGOと投資家は非常に最近コミュニケーションをよく取ってまして、最近、仲間のような扱いになってきているというのが本当に大きな変化かなと思いますね。


――世界の動きはよくわかったんですけど、日本はどうなんでしょう?

そうですね、実はこのESG投資というのは、実は世界で始まったのは、もう十数年前にはなるんですが、日本ではこの2年ぐらいにこの動きが急に広がってきています。その背景には、日本の公的年金、皆さんの国民年金や厚生年金の運用を扱っている公的年金というものがあるんですけども、この公的年金がESG投資に興味を持ってはじめたということで、日本で急に話題になってきてますね。


――その他、何か対策をしている企業であったり、動きはあるのでしょうか。

例えば気候変動の分野でいきますと、ひとつは以前から言われているように、いかに二酸化炭素を減らすかという動きもありますけれども、やはり最近は災害が非常に増えてきていますので、この災害に強くなる、事業を止めなくてもいい、もしくは災害時にすぐにビジネスを展開できる、そういう企業さんにこそ、投資家は将来を感じるようにはなってきてますね。


――投資家の見る目というのは本当に厳しくなっているわけですよね。

その通りです。


――一方で、その先ほどネットの声でもありましたが、ESG投資も行き過ぎれば反動もあるんじゃないかというような、これが一過性のブームのようなものではないかという懸念もあるんですけれども、そのあたりどうでしょうか?

そうですね。もしこの動きが、社会・環境に配慮するということが投資リターンを減らせてしまうのであれば、やはり長続きはしないのかもしれませんが、実際にはESG投資の本流、まさに一番盛り上がっていっているのは社会・環境に配慮しながら投資リターンを増やすという動きになってきています。

これが欧米ではもう13年の歴史が続いていて、さらにこれが減ることもなくずっと伸びておりますので、一時のブームで終わるというのは、やはり杞憂(きゆう)であって、これから大きな新しい考え方になっていくだろうなというふうに私は思っています。


――私たちの身近な企業でもやっぱりそういった取り組みってあるのでしょうか?

そうですね、例えば消費財メーカーですね。最近は、このプラスチックを減らしていく動きが出ていますが、例えば、大きな消費財メーカーもシャンプーのボトルに再生プラスチックを増やしていったり、ペットボトルの飲料メーカーさんも再生プラスチックを増やしていくという動きが出てきています。

実はこの裏にはですね、NGOだけではなくて、実は機関投資家と言われる方々が、このESG投資の文脈で、企業にそういう変革を迫っているというのも実際には起きている動きになりますね。


――そういった意味では、本当に世界的に避けられない流れ動きである事は間違いないでしょうか。

そうですね。私もそう思いますね。


■夫馬賢治氏プロフィル
ニューラル代表。サステナビリティ経営やESG投資に関するコンサルティングやアドバイザリー業務、ニュースサイト「Sustainable Japan」を運営。ESG投資とは環境・社会・企業統治に配慮した経営を評価する投資。金銭的なリターンと社会の持続可能性を両立することが期待できる。夫馬さんがESGに目覚めたのは米国留学時。大企業が持続可能性を掲げ、長期の経営目標を打ち出す様子に、この流れは日本にも絶対くると確信。帰国後まもなく、ニューラルを設立した。


【the SOCIAL opinionsより】