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離れた場所“つなげて”世界を変える男 2

2019年3月20日 17:33
離れた場所“つなげて”世界を変える男 2

株式会社ブイキューブ代表取締役・間下直晃氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「リーマンショックで上場延期、しかしピンチがチャンスに」。その真意を聞いた。


■リーマンショックがチャンスに


――テレビ会議がインターネットでできるシステムを主力事業に据えたことでブイキューブは順調に発展しました。2009年には上場を目指して準備を進めていたということなんです。しかしその時リーマンショックが起きたんですよね。これがチャンスになったということですが、どういうことなのでしょう。

リーマンショックによって起きたことというのは、やはり全体的に景気が悪くなりますから、経費を削減しないといけないというふうになります。そうした時にやはり大きな経費として移動交通費というのがあるんです。そういう交通費の削減をしたいとなると、テレビ会議が有効だという発想になります。多くのお客様がそれに気づいてきてくれたのです。

同時に経費削減ですから、投資もできない。いわゆる専用の機械を使ったような昔からあるテレビ会議、これは先ほど我々は買えなかったように1000万とか値段が高いですから、これを買うことも許されないわけです。

我々みたいにパソコンとかスマートフォンで動く安価に使える仕組み、こういったものにお客様からの注目が一気に集まったというのがリーマンショックによって起きた我々にとっては良い効果だったと思います。


■「悩んでいる暇はなかった」


――ただリーマンショックで上場が一時延期となりました。社内の雰囲気はどうだったのですか。

「上場するぞ」とみんなにいっていたわけではないので、しかし関わった人からするとがっかりな部分はありますよね。


――真下さんご自身はモチベーションが普通に考えればちょっと下がってしまった時だったのかなと思うのですが、その時はどういう気持ちだったのですか。

がっかりした部分はありましたが、世の中が大きく変わり始めたタイミングでもあり、先ほどのお話の通り我々にとってはすごいチャンスだったんです。1年間でお客さんは3割増えましたから、非常に飛躍するチャンスだったんです。

ただ、同時にみなさん2008年までは、先ほど1000万とか高い仕組みだと買えないという話をしたものの、それまでは我々の仕組みを丸ごと買っていただくような大企業が何千万円で買ってくれていたんです。

だから、比較的すぐに売り上げや利益が計上できたので、2009年に上場できるかもしれないというところまでいったのですが、2009年からは月額課金モデル、我々はクラウドといっていますが、月々の利用料金を払っていただいて我々の仕組みを使っていただくようなモデルに変わりました。

これは、なかなか売り上げがすぐに上がらないんです。毎月払っていただくということは、毎月売り上げじゃないですか、時間がかかるじゃないですか。そうすると短期的にはものすごく厳しくなるんですね。ですのでもう悩んでいるヒマはないんです。

なんとかこれを切り抜けて、ただお客さんがどんどん増えてきますから、増えていけば将来は明るい。しかし、足元を何とか回していかなければいけない。上場の延期のショックよりも目の前は何とかして、次につなげていかなければいけないという方が大きかったですね。


■ドローンを現場に飛ばして“つなげる”


――ピンチをチャンスに変えて、世の中の変化も自身のビジネスへ変化させるきっかけにする力で動かれてきたんだと思うのですが、今また新たにドローンを活用されたビジネスも始めたそうですが、どういうものなのでしょう。

これはドローンのハブ、“ドローンハブ”という仕組みで、我々からカーブアウトしたセンシンロボティクスという会社でやっておりますが、災害対策やインフラの点検など、色々な社会課題があって人が足りません。

例えばインフラがどんどん老朽化している中でそれを点検する人がいない、または災害が起きたとき、どうやって被害を最小限にしていくか、こういうところでドローンが活躍できる場が出てきています。そこに我々のテクノロジーを使っていこうということです。

(モニターに映っている)こちらはドローンの基地局で普段は閉まっているのですが、必要に応じて開いてドローンが飛び立って現場に飛んでいき、現場の様子をテレビ会議を経由して指令室から見ることができる。そういった仕組みを色々なところにも提供しています。


■世の中をイーブンにしていく


――離れた場所にいる人同士がコミュニケーションをとれるという意味では今までの技術をさらに応用して、活用したという形ですね。他にもなにか新しい取り組みなどはあるのでしょうか。

やはり働き方だけではなくて、世の中に色々ある地域格差みたいなものや東京一極集中の問題、少子化の問題、これらをどう解決するかということに取り組んでいます。

例えば東京にいないと仕事がない、子供の世話をしなければいけないから仕事ができない、介護があるから仕事ができない…これらはよくある話ですよね。こういったところをテレビ会議やウェブ会議の仕組みを使って解決していこうという流れの延長で、いま例えば地方に行くと医者が足りない、先生が足りない、こういったところを我々の映像の仕組みを使って解決していこうと。

具体的にいいますと、今までは、必ず面前で会わないといけないとされていたものがどんどん変わってきているんです。テレビ会議であってもいい。お医者さんに行くのもテレビ電話を通じて行けばお医者さんに行くことができたりとか授業をテレビ電話を通じて受けることができるようになったりとか、こういった変化が起き始めています。

こういうところに我々の仕組みを提供して世の中をよりイーブンにしていく。こうした取り組みをさせていただいています。