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不正統計“データのプロ”はどう見てるか?

2019年2月26日 15:36
不正統計“データのプロ”はどう見てるか?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「統計の信頼性」。データサイエンティストで、株式会社グラフの代表取締役の原田博植氏に聞いた。

今、問題となっている不正統計問題。厚労省は2004年から毎月勤労統計調査で、従業員500人以上の事業所を全数調査しなければならない中で、東京都の分は、3分の1だけを抽出して調査を行っていた。この他、国の56の基幹統計のうち約4割で問題があったことが判明している。

これに対して、ネット上では「海外からの信用も落ちた」「調査・統計に関わる人が少ないのでは」「調査、データ、統計、正確なものはどこに…」といった声が聞かれた。


――原田さんの意見を聞きたいと思います。

『サンプル調査と全数調査』と書きました。今回の統計調査というのは、基本的にはサンプル調査というもので、3000から3万、30万と、推測していくような手法が磨かれてきて、いわゆる統計調査というものが出てきました。その中で、データの取れる量が爆発的に大きくなっているので、データの全量から実際を知ろう――そもそも社会を映す鏡としての統計データをより正確に知ろうというものが進んでいます。


――今、どんどんこういう問題が起きていったら、将来的にはどうなっていくと思われますか。

メリット・デメリットがありまして、要は全数調査ができるということは、私たちの個人情報含めて全部をまとめる人・場所があるということです。その主体は信用できるのか、それが例えば政府、中国のアリババスコア(人の社会的な信用度を数値化するシステム)では、先に与信は細かく判定できるけれども、えん罪の時には大変だとか、そういう問題が起きていると思います。


――ビッグデータと集めるところが、ちゃんとしているかどうかが大事になってくる。そしてこういうことが基幹統計の不正調査などが出てくると、サンプル調査というのが、厳しくなってきそうですよね。日本はどういう方向に向かっていきそうですか。

やはり不可逆的で、後戻りはできないと思います。どんどんデータを大量に取る、ためていくという流れは進んでいくと思うんですが、やはりそこにモラルというものが、法整備を含めて、進めていくべきだと思います。


――一方で、全数調査が進んでいくと、どのようなことが良くなっていくのでしょう。

いろんなことが便利になりますし、正確に社会の実態がわかることで、政府の打つ手も正しいことが判断しやすくなると思います。社会の改善に関しても何となくではなくて、「こうすべきだろう」という部分が精緻になって、判断するモラルとモチベーションが正しければ、さらに良い社会になっていくと思います。


■原田博植氏プロフィル
データサイエンティスト。2016年、株式会社グラフを創業。国内主要産業の大手企業を中心にAIなどを活用し、ビッグデータを分析。データ活用のビジネス戦略を立案し、現場で実現するところまで支援している。また、経済産業省の「情報の集積」についての研究会の委員も務めている。


【the SOCIAL opinionsより】