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船の世界でも“自動運航” 開発現場を取材

2018年6月3日 2:01
船の世界でも“自動運航” 開発現場を取材

自動車の世界で日々開発が進められている自動運転の技術。実は、船でも「自動運航」を目指す動きが出ている。1日、国土交通省の会議で、将来の実用化に向けたロードマップがまとまった。

先月。都内の運河をゆっくりと進む東京海洋大学の小型船。よく見てみると・・・操縦席に人がいない。実はこの船、大学内の建物の7階から遠隔で操縦している。

船に搭載されたGPSやカメラで位置や周辺の状況を把握し、エンジンの出力や、向かいたい針路の情報を、無線通信で船に送ることで、操縦席に人がいなくても動かすことができる仕組みだ。

東京海洋大学・清水悦郎教授「ずっと1人で見張りをして、安全確認しながら運航するのは、負担が大きいので、少し気を抜いても大丈夫なように開発した技術が、少しでも使っていければ」

自動車だけでなく、船の世界でも開発が進む“自動運転”の技術。1日、国土交通省が開いた会議で、「自動運航船」の実用化に向けたロードマップがとりまとめられた。

2025年を一つの目標にして、遠隔からの操縦技術のほか、安全で効率的な針路を自動的に判断し、船員を助けられる技術の普及を目指している。

しかし、貨物船など大型の船は、停止や方向転換に特に時間がかかるため、ほかの船と衝突する危険を素早く察知できなければ、安全に航行することはできない。

現在、大型船では、熟練した船長が経験などに基づいて針路を決めているが、危険の予測や回避のためにどうすべきかを船が自動で導き出し、船長に提案できるようにする新たな技術開発が始まっている。

開発の現場では、大型船の操船スペースのシミュレーターを使った研究が行われていた。周辺をたくさんの船が行き交う中、船長や航海士が、慎重に針路を決め、進んでいく。日本郵船などが進めている実験では、このような操船のシミュレーションを繰り返し行い、船長が危険を回避するときの判断をデータ化。船を操縦するシステムに取り入れることで、適切な針路が自動で導き出せるような技術の開発を目指している。

日本郵船・桑原悟船長「安全に航行できるように、見落としをなくしたり、気づきを早くしたり、戦略的にどう操船すればいいかサポートができればいい」

こうした技術で、運航の一部でも自動化できれば、長時間にわたり緊張を強いられる船員の負担を軽減し、衝突しそうな船を見落とすミスを減らすことができる。

自動運航船の実現に向け、新たな技術開発は着実に進んでいる。