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日本でベンチャー育成 環境構築への挑戦3

2018年1月29日 16:50
日本でベンチャー育成 環境構築への挑戦3

Plug and Play Japanのフィリップ・誠慈・ヴィンセント代表に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「日本で世界に通用するベンチャーを育てたい 3か月で支援企業を見極める秘訣とは」。その方法に迫る。


■エコシステムの必要性

――なぜ日本に進出しようと思ったんでしょうか。

まず個人の話になってしまうんですけど、日本人とアメリカ人とのハーフということで、日本とアメリカの架け橋を作りたいという思いがあります。

シリコンバレーで「日本に新しいものを紹介するハードル」を感じましたが、日本でシリコンバレーのように、スタートアップ・エコシステムというスタートアップが育ちやすい環境を作れば、ベンチャー企業と大企業のギャップも少しずつ縮まるんじゃないかと思ったんです。

ちょうど1年前ぐらいに、日本でPlug and Playを作りたいという考えがあったんですが、三菱東京UFJ銀行が「もし日本に来るのであれば、第一パートナーとしてサポートしてあげる」と言ってくれたのがきっかけになりました。それで半年前くらいにPlug and Play Japanを作りました。

東京という場所はあらゆる大企業が集まっているので、大企業メーンでやっているアクセラレーターとしては、最適な場所という理由もあったんです。なので、いま東京で、投資できるベンチャー企業を探し出し、日本の大企業の近くで日本の大企業をサポートできる仕組み作りをしています。


■3か月で支援企業を見極める方法

――そのサポートですが。支援の期間が3か月というのはとても短いように感じるんですけれども、大丈夫なんでしょうか。

大丈夫です。短いようですが、逆に3か月間で見極めをしなくちゃいけないんです。ベンチャー企業はスピード勝負ですが、まさにその3か月間で、Plug and Playとして、投資家として、投資をするかどうかの判断をしなくちゃいけない。大企業にとっては、実証実験まで進むかどうかを決めなくちゃいけない。

そうすると、3か月間は最適なタイミングにはなると思うんです。3か月間のプログラムだと1年間に2つ回せるので、スタートアップの数は結構早く回せるということで、3か月間になっています。


――具体的なその見極めの方法というのは、どんな感じなんですか。

これはPlug and Playの見極めの方法なんですが、「とにかく友達をたくさん作る」。

例えば、AI(=人工知能)をやっているベンチャー企業が10社いるとするじゃないですか。それを見極める方法が、10社のベンチャー企業を10社の大企業、10社の投資家に会わせます。

そうすると、フィードバックをたくさん聞けるようになるじゃないですか。フィードバックをたくさん聞けるようになると、どのベンチャーが成功するかというのをフィードバックを聞くだけでわかるんですね。それが、簡単に早く見極める方法の1つです。

それ以外にも方法はあります。Plug and Playが投資するベンチャー企業というのは、シードステージというかなり若い段階のベンチャー企業です。そうすると、「物もない。商品もない。サービスもまだない」というベンチャー企業は、どうしても人を見て判断するしかないんです。

「人を見る」というのも、どのくらいのパッションを持っているか。実行力とも呼んでいますが、ビジネスプランを作り上げて、そのビジネスプラン通りに本当に実行できるかどうかという人材なのか。そういったところを人として判断して、投資をするというのが多いですね。


■失敗しやすいベンチャー企業とは

――やっぱりパッションというのは大事なんですね。反対に、これはうまくいかないなというのは、どういったベンチャー企業になるんでしょうか。

ベンチャー企業への質問で、「もし、ベンチャー企業のビジネスプランがうまくいかなければ、プランBは何ですか?」と、たまに聞くんですよ。そのプランBの内容を答えた瞬間に、「あ、これはNGかもしれないな」と思うことがあります。

というのも、「プランBはないです。プランAを必ず成功させます」というベンチャー企業の方が、情熱があって絶対実行できる力があるベンチャー企業なので。バックアッププランがあるベンチャー企業は、失敗しやすいベンチャー企業ですね。


■急成長するエコシステムの波に乗る

――日本での支援を行っていく中で、フィリップさんの今後の展望を教えていただけますか。

日本に来てまだ半年ですが、今、世界から見ての日本は、最近なかなかイノベーションが生まれていない、ベンチャー企業が育たない、海外で成功しているベンチャー企業は「日本に行かないよね」などのフィードバックがたくさんあるんです。海外で成功しているベンチャー企業は、どうしても中国やシンガポール、香港などに行ってしまうとか。

どういうふうに日本に招くかというのが、Plug and Playの勝負にもなってくると思っています。今、たくさんの日本の大企業がベンチャー企業とやりたがっていて、Plug and Play以外にも、日本でベンチャー企業を支援している他のアクセラレーターや、投資家などもたくさん出てきています。

さらに今、大学では、たくさんのベンチャー企業を育てる色々なプログラムを作り出していて、かなりポテンシャルが高いスタートアップのエコシステムにはなると思うんです。これから急激に育つベンチャー企業のエコシステムの波に乗れるように、Plug and Playがいま日本にいるというかたちですね。