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米政権・軍事行動のカギ「新兵器」とは

2018年1月17日 18:43

【トランプ大統領就任1年】
アメリカのトランプ政権発足からまもなく1年。連日注目されているのが、北朝鮮との駆け引き。北朝鮮が韓国との対話に乗りだす中、アメリカでは軍事行動を想定した準備も着々と進んでいる。そのカギとなる「新兵器」を独自に取材した。

◆敵の電子システムを破壊する“新兵器”

アメリカ南西部、ニューメキシコ州にある空軍基地。日本テレビは、ここで開発が進められている「新兵器」の取材を日本メディアで初めて許された。

撮影禁止の通路の先に待っていたのは─

担当者「(Q:兵器の名前は?)『チャンプ』です」

記者「思ったよりそんなに大きい兵器じゃありませんね」

彼らが「チャンプ」と呼ぶこの新兵器は、強烈なマイクロ波を発し、敵の電子システムを破壊するという。

国防総省が制作した「チャンプ」のCGでは、爆撃機から発射された「チャンプ」は、敵の領土上空を通過する際にマイクロ波を照射。すると、建物内部の電子システムが使用不能になってしまう。実際の実験の映像でも、「チャンプ」の効果で建物内のパソコン画面が一斉に真っ暗に。「ほぼ100%、電子機器を使用不能にした」という。

さらに─

カートランド空軍基地空軍研究所 マリールー・ロビンソン部長「人に一切、危害を与えることなく、敵が任務を遂行する機能を破壊できる、極めて効果的な技術です」

◆対北朝鮮で使用検討も?

この「チャンプ」、まだ実戦配備はされていないが、実は去年8月にホワイトハウス内ですでに使用が検討されていたと報じられている。目的はもちろん、北朝鮮のICBM(=大陸間弾道ミサイル)の発射阻止。発射施設やミサイルの電気回路だけを破壊し、使用不能にしてしまおうというのだ。

記者「北朝鮮がICBMを発射するのを妨害するのにも有効?」

別の担当者「北朝鮮などの質問には答えられません」

今年に入り、平昌オリンピックへの参加を表明するなど、韓国との対話にかじを切ってきた北朝鮮。ただ、核・ミサイル開発を続ける中、オリンピック後は再び情勢が緊迫する可能性も。

さらに今年に入ってからも、アメリカメディアは、トランプ政権が北朝鮮の核・ミサイル施設への限定攻撃を検討していると報じている。

◆「対話路線」の模索は

一方、この「強硬路線」とは別のアプローチを模索する「キーマン」がカナダ・バンクーバーにいた。

日本時間17日未明から開かれた、20か国が北朝鮮問題を話し合う外相級会合。各国との会談や会合など精力的に活動しているアメリカのティラーソン国務長官が、会見に臨んだ。

ティラーソン国務長官「全ての国が北朝鮮との経済・外交的関与を制限すれば、交渉による解決の可能性は高まる」

ティラーソン国務長官は、政権の中では「対話派」と目されている。先月も…

ティラーソン国務長官「北朝鮮が望めば、我々はいつでも前提条件なしに対話を行う用意がある。まずは会おうじゃないか」

今回の外相級会合では、その開催を主導。外交圧力を強めることで、北朝鮮を「対話」に引きずり出したい狙いとみられる。

◆トランプ大統領は「強硬」?「対話」?

それでは、トップであるトランプ大統領自身の発言はどうかというと、「強硬路線」と「対話路線」の間を揺れ動いてきた。

──適切な状況下なら、金委員長と対話する(去年5月:対話)

──北朝鮮は“炎と怒り”に直面する(去年8月:強硬)

──ちびのロケットマン、病的なちび犬だ(去年11月:強硬)

──(Q:金委員長と電話会談したい?)もちろん、常に対話は有効だ(今月:対話)

◆政権は今、どちらにかじを切ろうとしているのだろうか?

トランプ大統領は今、金委員長に対し、オリンピック中が「対話へのラストチャンス」だとメッセージを送っている。ただ、これは、呼びかけに応じないなら、「軍事行動もありうる」という警告ともいえる。ある日米外交筋は「北朝鮮がアメリカ本土の近くに落ちるようなミサイル実験を行った場合は“危ない”」、つまり、即座に軍事行動に出るのでは、と危惧している。(NNNワシントン・井上幸昌支局長)

政権2年目に入る今年、トランプ大統領は「次の一手」を迫られている。