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成功例ゼロ「食のネット販売」に挑んだ男3

2017年12月18日 19:52
成功例ゼロ「食のネット販売」に挑んだ男3

オイシックスドット大地・高島宏平社長に聞く「飛躍のアルゴリズム」。オイシックス急成長の背景には何があったのか。忙しい主婦に支持される“ミールキット”の商品開発からひもとく。


■お客さんの日常は「毎年忙しくなっている」

――オイシックスといえば20分で、おかず2品を作ることができる、レシピ付きのミールキットが忙しい主婦などに人気なんですが、このような商品を開発したきっかけっていうのは何でしょうか?

これはですね。元々僕、毎月お客様のご自宅に訪問して、ヒアリングをするっていうことをずっと続けてるんですよね。その中で、そのお客様が、自分で言葉には出せないけど、モヤモヤしているニーズは何だろうっていうことをずっと考えながら、やっていたときに、そのほとんどのお客様が毎年、どんどん忙しくなっているんです。


――日常生活が?

日常が。ところが、じゃあ、冷凍食品とか総菜を買ってきて家庭に出すのは、すごい後ろめたさがあるんですよね。で、みんなとインスタグラムとかフェイスブックとかをご覧になっているので、他人の充実した食事は、結構毎日のように、目にしてるわけですよね。

そうすると、どんどん時間はないけども、どんどん求めるレベルは上がってきてると。これを叶えてあげるにはどうしたらいいかなっていうことを考えて、その半調理済みで、お客様にももちろん工夫もいただく、調理もしていただくんですが、時間を大分カットしてレシピもかなり工夫をし終わったものをですね、ご自宅に出せば、今までの後ろめたい時短から、少しは誇らしい気持ちのある時短のサービスができるかなということで、スタートしました。


■“時短”だけでないプラスアルファを意識

――後ろの画面にミールキットがありますけれども、野菜がふんだんに使われてますよね。そういったところにもこだわってらっしゃるんですか?手軽さ、時短の中にも。

そうですね。単なる時短っていうだけだと、やっぱり価値が同じだけど、短いだけだと、そんなに誇らしい気持ちにはならないと思うんですが、こういったサービスを使った方が、摂取できる野菜の種類はすごくいっぱいあるとか、なかなか家庭ではビビンバは作んなかったけど、これがあれば簡単に作れるとか、子供が今までよりも野菜をいっぱい食べるとか。こっちの方がむしろ価値が高いということと、時短を組み合わせることが今のところ支持をかなり受けてるなと感じます。


――ここ1年でこの料理キットって呼ばれるものが急速にヒットして、その一番の理由はなんだと思いますか?

正直ヒットしたと言っても、まだまだ始まったちっちゃな感じで、これからもっとどんどん大きくなるとは思っていますが、やはり、先ほど申し上げたように、みんなすごく忙しくなってるけど、すごく求めるレベルが上がってるんですよね。

やっぱり今まで時短商品が後ろめたかったんで、口コミをするとかなかったんですけど、やっぱり当社もそうですが、ミールキットというものが市民権を得てきているので、私「ミールキットを使っているんだ」っていうことが、恥ずかしくなく言えるようになっているので、口コミですごいスピードで広がってるなというふうに感じますね。


■遊び心が、家族の会話を育む

――私も実際に購入したりしたこともあるんですけども、値段はちょっとお高いですよね。通常の価格よりは。それでもニーズは?

でもですね。同じ量の野菜を個別に買って、作ろうとするよりは大分安いんですよね。お客様に言われるのは、1週間過ごした後に冷蔵庫がすごいキレイって言われるんですよ。お客様のストレスは、ちょっとずつ余った食材をなんとかやっつけるにはどういうレシピがいいか。でも、いつもの野菜いためも鍋も出したっていうのがストレスになっていて…ですよね?


――ストレスになりますね(笑)

その料理を作ることだけじゃなくて、献立を余った食材を使って、献立を考えなきゃいけないストレスっていうのは、やっぱりすごく大きかったんで。そこをそういうことを考えなくて済むということでいうと、トータル割安なぐらいですし、全然余らないし、食材を捨てなくて済む、ということだと思いますね。


――新商品もあえて投入されていたりして、タレントやレシピ本などコラボしたキットなどもいろいろ出されてるんですけど、そういった狙いっていうのもそこにはあるんでしょうか?

そうですね。やはり再三申し上げたように、単に時短というよりは、これをやった方が楽しいとか、タレントさんと同じものを家でやってみたらどうかなとか、そういうちょっとした遊び心が、日常の平日の夕食にちょっとあるだけで、家族の会話の触媒みたいなもんだと思うんですよ。食事というのは。

そういうのがいつもの食事よりちょっと変化があるだけで、いい触媒になって会話が弾むと。で、会話が弾んで、おいしければまあ、だいたいその日は成功じゃないですか。と思うので、まあ、そういうふうな日々を過ごしていただきたいなと思ってやっています。