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新幹線史上初の重大インシデント…なぜ?

2017年12月15日 19:17
新幹線史上初の重大インシデント…なぜ?

JR西日本の東海道・山陽新幹線「のぞみ34号」で台車に亀裂が発生したトラブルを受け、国土交通省はJR5社に対し、すべての新幹線の台車の緊急点検を指示した。新幹線史上初の重大インシデントについて詳しく見ていく。

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■異常音も…運転続ける

博多発東京行きののぞみ34号は11日午後1時33分に博多駅を出発した。まず、最初の停車駅の小倉駅を出るときに乗務員が焦げたようなにおいに気付く。そこで岡山駅から乗車したJR西日本の社員が調べたところ、13号車から14号車の間でうなるような異常な音を確認したという。このときは走行に支障はない、として運転を続けたが、京都駅付近で再び異臭があった。そこで名古屋駅で車両の床下を調べたところ、台車に亀裂が見つかり、運休となった。

それから4日たつが、車両はいまだに名古屋駅のホームに止まっている。簡単には動かせない事情がある。詳しく説明すると、新幹線の車両には、普段は外からは見えにくいが台車が前と後ろに2つついている。そして台車には直径約86センチの車輪が前後に4つついている。亀裂は台車の一部で見つかっていて、その長さは10センチ以上だった。

■最悪「脱線」の可能性が

のぞみ34号は亀裂が入ったまま走っていたということだが、亀裂の他にも、モーターの回転を車輪に伝える「継手」という部分が変色していて、JR西日本は焦げたようなにおいはここから発生したとみている。

のぞみ34号は山陽新幹線の区間では時速300キロのスピードが出る。国土交通省鉄道局の担当者は、最悪の場合、脱線していたかもしれないと話している。亀裂が見つかって以来、のぞみ34号が名古屋駅のホームにずっと停車したままなのも、動かすと脱線の可能性があるからだ。

車体にそれほど危険な状態のトラブルをかかえたまま、小倉から名古屋まで3時間以上走っていたことになるが、異常の報告がありながら走行を続けたことについて、石井国土交通相15日、「判断の妥当性についてもしっかりと検証してまいりたい」と話した。

■なぜ亀裂が?

そして、そもそも、なぜ亀裂ができたのかについては、まだ明らかになっていない。鉄道技術に詳しい元JR東日本の阿部等さんによると、「使われている材料の疲労などによる劣化」や「製造段階で分からなかった目に見えない材料の不良」など複合的な原因が考えられるのではないかとしている。

■トラブル前日の点検でも異常なし

トラブルを防ぐための点検について、JR西日本は目視による点検を、なんと2日に1度行っている。トラブル前日にも点検していて、異常はなかったという。また先月30日には動作確認、今年2月には車体と台車を切り離し、装置や部品を分解する検査を行っているが、いずれも異常は見つかっていなかったという。

■点検方法を見直す必要が?

国土交通省は、JR5社に対して新幹線の全車両約4800両の台車を緊急点検するよう指示している。ただ、今の点検方法で見つからなかったのであれば、点検方法そのものを見直す必要が出てきて、これは大変な作業になるかもしれない。

新幹線は1964年に開業したが、それから半世紀以上事故による乗客の死者はゼロという高い安全性を誇っている。これから年末年始に向けて家族で里帰りするなど大勢の人が利用する時期に入るため、トラブルのないようにしてもらいたい。