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カズオ・イシグロさん、日本への思いを語る

2017年12月7日 18:25

 10日にノーベル賞の授賞式が行われる。文学賞を受賞する日系人作家のカズオ・イシグロさんがスウェーデンで会見を行った。日本への感謝と、日本で生まれ育ったことへの喜びを語った。

 スウェーデンのストックホルムにあるノーベル博物館。姿を見せたのは、ノーベル文学賞に選ばれた日系イギリス人作家のカズオ・イシグロさんだ。受賞者は博物館の椅子にサインするのが恒例で、イシグロさんもサインをするためにこの場所を訪れた。また、イシグロさんは代表作「日の名残り」が映画化された際に撮影で使われた皿を寄贈した。

 6日、記者会見に臨んだイシグロさん。「日本語でメッセージを」と求められると…。

 イシグロさん「日本語は勘弁して下さい。スミマセン、ドウモ」

 そして、受賞が決まった後、日本の人たちが歓迎してくれたことに感動したと話した。

 イシグロさん「みんな村上春樹さんの受賞を期待していたはずなのに、一瞬の落胆の後、私が日本生まれだと知って、自然に受け入れ、拍手してくれたと聞きました」「私の中の一部は今も日本人です」

 長崎県出身で日本人の両親の間に生まれたイシグロさんは5歳の時、父親の仕事の都合でイギリスに移住。その後、東部・ノリッチのイースト・アングリア大学大学院に進学し、創作学科で学んだ。当時、イシグロさんを教えた教授はこう話す。

 クック教授「彼は思ったことをズバスバと言う学生でした。他の学生は彼のことを尊敬していました」

 在学中、イシグロさんは大きな転機を迎えたという。

 クック教授「イシグロさんはここで学ぶ間に、自分が日本について書けるということに気づきました。それまで彼は日本について書いたことがなかったのです。自分の殻を破る、とても重要な経験だったと思います」

 日本人としてのルーツに向き合うことで新境地を開拓したイシグロさん。35歳にして英語圏最高の文学賞であるブッカー賞を受賞し、イギリスを代表する作家となった。

 会見でイシグロさんは核兵器の問題についても言及。今年のノーベル平和賞にICAN(=核兵器廃絶国際キャンペーン)が選ばれたことを歓迎した。

 イシグロさん「私の母は長崎への原爆投下により被爆しました。ある意味で私も、原爆の影の中で育ったのです」「ノーベル平和賞で核の問題の重要性に再び光が当たることになり、とてもうれしい」

 ノーベル賞の授賞式は今月10日に行われる。