“子連れOK”どこまで?議員の提起に賛否
熊本市議会の女性議員が、子どもを連れて議場に入ったことが話題になっている。女性議員の行動に対して賛否両論あるが、企業では、子連れ出勤を認める動きも出ている。議会や企業、公共の場まで、“子連れ”への対応に取り組む現場を取材した。
■熊本市議会で起きたこと
11月22日の熊本市議会に、緒方夕佳議員が子どもを連れて現れた。緒方議員は長男と共に議場へ。他の議員たちは、議事の進行に混乱を招くとして抗議。議会の開会が40分遅れる事態となった。
緒方夕佳議員「赤ちゃんの子育てと議員活動の両立については、個人的なことというような対応だったので、見える形で表したいと思いまして」
子育て中の議員に対する支援について問題提起をしたかったという緒方議員。議会側は、厳重注意を行い、子育て中の議員が安心して議会に出られるような仕組みを一緒に検討していく意向を示している。
この出来事は、インターネットでも話題になり、一日で2万件近いツイートを記録した。
■“子連れ”で仕事、可能?
熊本市議会で起きた騒動に、街の人は─
会社員(30代)「(子どもを)預けるところがないっていうのは、本当に身近に感じていることなので、そういうアピールは共感できるなって気はします」
医療関係勤務(60代)「あの場に連れてきて訴えたかったことの意義は分かるんだけれども、もうちょっと違う方法はなかったかなって」
賛否が分かれる中、SNSではこんな動きも。
映画監督・紀里谷和明さんが、「紀里谷と仕事をされる方はどなたでも子供連れてきてもらって結構です。」と投稿、打ち合わせなどに子どもを連れてきても気にしないことを表明。この発言に賛同が広がっているのだ。
NPO法人フローレンス 駒崎弘樹代表(話)「子どもを連れて打ち合わせに来るっていうことって、特に誰も困りませんし、できないことではないと思っているんです」
■実際に子育てをしながら活動を続ける議員は
4年前に女の子を出産し、子育てをしながら議員活動を続けている東京・杉並区の吉田あい区議をたずねた。
吉田あい議員「こちらの部屋で私が議会中、シッターさんをお願いして、子どもを見てもらっていました」
区議会の中にある和室で、子ども連れの傍聴者が訪れた際に託児スペースとして使用されている場所だ。実家には預けることができず、保育園にも入れなかったため、1年間、自費でシッターを雇い、議会に出席していたという。
吉田あい議員「仲間の議員の理解と事務局の協力をいただいて、議会のほうに娘を連れてきたという感じです」
その一方で─
吉田あい議員「やっぱり大変だなと思うことも多々ありました。女性の議員がなんの遠慮もなく、気兼ねなく、ごく普通に子育てと議会活動の両立できるようになっていけばいいなと」
■企業での取り組み
一方、企業では、取り組みが広がりつつある。ギフト販売を行う東京・目黒区の「ソウ・エクスペリエンス」では、デスクの間を、おもちゃを持ちながら女の子が歩いていた。
1歳の娘を連れて働くのは、パートの石井さん。オフィスで子連れ出勤が認められているのだ。
石井友花莉さん「娘がちょっと騒いでも誰かがあやしてくれたりですとか、集中して仕事ができる環境をつくっていただいているので」
スタッフの助け合いにより成り立っている子連れ出勤。今後の会社の利益にもつながっているという。
ソウ・エクスペリエンス 西村琢代表取締役「今日、明日、半年、1年見たときに、子連れがいると生産性が下がるのは間違いない。だけど3年、5年、10年見たときに、採用コストだとか教育コストですとか、長い目で見たら圧倒的にそっちのほうが生産性が高い」
■多くの企業が注目、子連れ出勤を認める企業も
「ソウ・エクスペリエンス」には、多くの企業が見学に訪れているという。
見学会に、銀行や大手IT企業などこれまで約80社が参加したという。その中には、子連れ出勤を認めるようになった企業もある。
イベント企画運営会社では、今年9月からオフィスの一部にスペースをつくり、現在3人が子どもを連れて仕事をしているという。
また、職場だけでなく、美術館なども子連れでは行きづらい場所だが、都内にある三菱一号館美術館や千葉県の佐倉市立美術館は、館内で自由に話ができ、子連れの方にも絵画を楽しんでもらうための企画を定期的に開催しているという。