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<解説>北をテロ支援国家「指定」なぜ今?

2017年11月21日 16:58

 アメリカ・トランプ政権は20日、北朝鮮をテロ支援国家に再び指定した。指定は9年ぶりだが、なぜ今なのか、そして何が変わるのか、詳しく解説する。

◇テロ支援国家とは?

 アメリカが国際的なテロ行為にお金や物資を支援しているとみなした国を名指して指定するもの。現在はイラン、スーダン、シリアの3か国がイスラム過激派組織など様々なテロ集団を支援しているとみなされ、指定されている。北朝鮮は4か国目となる。

 元々、北朝鮮は、大韓航空機爆破事件をきっかけに1988年、テロ支援国家に指定されていたが、その20年後の2008年、北朝鮮が核開発計画を検証するための措置に合意したとして、指定は解除された。それには、北朝鮮が「核の無能力化」を進めることが条件となっていた。

 ところが、解除された翌年に核実験を行い、金正恩政権になってからも繰り返し、「核の無能力化」どころか逆に「核開発」を進めている。さらに今年2月には金正男氏が殺害される事件があったため、再び指定された。

◇指定されると何が変わる?

 アメリカからの経済支援が制限されるほか、武器の輸出が禁止されるといった制裁が科される。さらに、海上自衛隊・元海将で金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は「アメリカが先制攻撃する根拠のひとつになる」と指摘している。

 2003年には当時のブッシュ大統領がテロ支援国家に指定していたイラクに対して先制攻撃を行った。そして始まったのがイラク戦争だ。

 こうした前例もあって北朝鮮をテロ支援国家に再指定することは、理屈上はイラクと同様、アメリカが先制攻撃できる根拠になると伊藤教授は指摘している。

◇なぜこのタイミングで指定に踏み切った?

 実は、中国の動きと関係がありそうだ。20日夜、北朝鮮から中国・北京に戻った習近平国家主席の特使は、金正恩委員長とは会えずに帰ってきたとみられている。韓国統一省の関係者によると、中国の特使が訪問して最高指導者に会えなかったとすれば初めてのことだという。

 国際情勢に詳しい元外交官の宮家邦彦氏は、「中国の特使は、北朝鮮に行くもゼロ回答で帰ってきた。テロ支援国家への再指定は北朝鮮に対するメッセージというよりも、中国に対するメッセージ」だという見方を示している。

 中国の特使を派遣する前にはトランプ大統領もツイッターに、「大きな動きだ。何が起こるか見てみよう!」と書き込んでいて期待感を示していた。アジアを歴訪したトランプ大統領は、米中首脳会談の直後ということもあって中国が特使を送ることで何らかの前進があるのではと注目していたが結局、進展はなかった。

 こうしたことを受けて、トランプ大統領は、中国は北朝鮮に厳しい態度をとるつもりがない、そして北朝鮮も態度を変えるつもりがないことがはっきりしたとして、テロ支援国家に再指定したのではないかという見方だ。

◇再び指定することで、より強い圧力をかけることに?

 北朝鮮には160か国以上と国交があって制裁の抜け道がある。アメリカが北朝鮮をテロ支援国家に指定したことは「ならずもの国家」だと国際社会にアピールする意味がある。抜け道になっている国々に対してプレッシャーにもなるので、より制裁の効果を高めることにつながる可能性はある。これに対して北朝鮮がどう出てくるのか注意して見ていかなければならない。