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想像を実現する創造力 育むのはデジタル2

2017年10月25日 21:34
想像を実現する創造力 育むのはデジタル2

 NPO法人「CANVAS」理事長の石戸奈々子氏に聞く「飛躍のアルゴリズム」。2つ目のキーワードは「プログラミング=創造力+コミュニケーション能力」。石戸氏が語る普遍的なプログラミング思考とは?


■プログラミングで学ぶ論理的思考

――プログラミングというと、数式を組み立てて、作るようなイメージなんですけれども、コミュニケーション力なんですね。

 そうですね。私たちは2002年にCANVASを設立した当時からプログラミング教育を推進してるんですね。そこで大事にしてきたことっていうのは、「プログラミングを学ぶ」のではなくて、「プログラミングで学ぶ」ってことをずっと大事にしてきました。

 それはプログラミングを通じて、論理的に考えて問題を解決する力だったり、他者と共同して、新しい価値を創り出す力だったりを育んでもらいたいなと。そういう意味で、プログラミングをツールとして使っていくってことを大事にしてきたんですね。

 ここに来て、プログラミング教育の必修科みたいな話が出てくると、時に誤解を招いていることもあって、よく言われるのが、「小学校段階からプログラマーを育成するんですか?」っていう質問がすごく多くて。

 私たちはそういうことではなく、例えば国語の授業があるからといって、みんなが作家になるわけではないですし、音楽の授業があるからといって、みんながミュージシャンになるわけじゃないですよね。

 それと同じように、小学校で学ぶプログラミングっていうのは、たとえどんな職業に就いたとしても、普遍的に使えるプログラミング的思考を学ぶってことが大事で、私たちは「読み書き・そろばん」から「読み書き・プログラミングの時代」って言ってるんですけど、あくまでも、基礎教養としてのプログラミングを、小学校のうちから学ぶ環境を整えられるといいなと思っています。


■コンピューターでなく人間でプログラミング

――子どもにプログラミングを伝えるっていうのは隣のお友達に絵を描いてもらう…みたいな感じなんですか。

 いろいろなやり方があって、実際に子どもたちはパソコンとかロボット教材、そういう玩具とか教材もたくさん出ていますので、実際にプログラムを書きながら、試行錯誤して、動きながら「コンピューターってどういうことなんだろう?プログラミングってどういうことなんだろう?」ってことを学ぶ場合もありますし、その前段階として、「コンピューターを使わないプログラミング」っていうのもやってることがあるんですよね。

 例えば、お友達と一緒に誰かに何かおやつを届けましょうってなったときに、「前に5歩進んで」「右に向いて」「右にまた真っ直ぐ5歩進んで」「今度左向いて」とか、過不足なく順序立てて指示していかないと、お友達をゴールにたどり着かせることってできないですよね。

 それってある意味、プログラミング的な考え方で、そういうことを友達と一緒にやったりすることも活動の中ではやっていますね。


――ちゃんと指示を的確な形で人に伝えているということなんですね。

 そうですね。ある動作を細分化して順序立てて組み立てて、過不足なく伝えていく。コンピューターは、指示した通りのことしか動けませんので、それを人間でやってみるってことはやっていますね。


■社会認識の変化で活動躍進

――海外でもプログラミング教育が進んできたっていうところもあるんですけれども、今回、小学校でも必修化の段階になる時に、石戸さんも相当なご尽力をされたんですけど、説得は大変でしたか?

 そうですね。私たちはずっと学校外で取り組んできたんですね。それというのも、初めから学校で本当はやりたかったんですけど、2002年当時、なかなか学校は入りにくかったっていうのと、なかなか活動に対する共通認識が伝わらなかったっていうこともあって。学校外で始めたら、だんだんだんだんとすごく共感が集まってきたので、そこで忙しくなってしまったんですけども。

 ただ先ほど50万人というふうに言ったんですが、学校外でやってると所詮どんなに頑張っても50万人だなって思うんですよね。だけど、日本には小中学生が1000万人いて、全ての子どもたちに平等に学ぶ機会を考えると、学校の中でというのは私たちからすると、悲願だったわけですね。

 先ほど、2010年ぐらいから社会の認識が変わったって話があったんですけど、もう一つ変わったことがあって、それは、制度化なんですよね。一つには、2010年に日本の政府は、「2020年までに1人1台子どもたちが情報端末を持って学ぶ環境を整える」っていう方針を出したんですね。

 これまでは、「子どもに持たせるのはだめだ」って言っていたところから、持たないと学校でも勉強が成立しないという状況になっていて。そこから先は、結構トントン拍子に2020年からのプログラミング教育の必修化が決まりましたので、いろいろな提言をしたりとか、具体的な活動を作ったりとかありましたけれども、よかったなと思っております。