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美容院で脳卒中?“意外”な危険

2016年12月23日 18:35
美容院で脳卒中?“意外”な危険

 美容院で髪を洗っている時に脳卒中を発症することがある。海外ではこの症状を訴えた男性に、美容院が約1300万円もの慰謝料を支払ったというニュースがあり話題になった。美容院と脳卒中が、どう関係しているのだろうか。


■視力低下で一生運転できない

 イギリスの新聞“THE TIMES”によると、脳卒中で倒れたのは、45歳のデイブ・タイラーさん。タイラーさんは髪を洗ったことが原因で脳卒中になったと美容院に訴え、店側はタイラーさんに慰謝料として9万ポンド、日本円にして約1300万円を支払ったということだ。

 タイラーさんを診察した医師たちは、髪を洗う時に頭を後ろに傾けたことで首が曲がり、動脈にダメージを受けて脳卒中を引き起こしたと診断。タイラーさんは視力が低下し、一生運転することはできないという。

 このニュース対し、インターネット上ではこんな反応があった。

 「私もめまい起こしたことある」

 「怖っ 気をつけよう」

 「日本でもあり得る話ですね」


■首を後ろに反らせることで血栓が…

 実はタイラーさんのようなケースは他にもあり、“美容院脳卒中症候群”とも呼ばれている。美容院脳卒中症候群を研究する東京医科大学病院整形外科の医師・遠藤さんはこう話す。

 「(洗髪で)首をぐっと反らせてしまうと、首から脳に行く血流が頭蓋骨の下の部分で(血管が)圧迫され、それによって血流不全を起こし、脳貧血の状態になってしまいます。そのためにめまいとか吐き気、場合によっては頭痛、立ちくらみなどで歩行障害が出ることがあります」

 首の後ろ側には脳への血液を運ぶ動脈がある。洗髪で首を後ろに反らせていると骨で血管が圧迫され、脳に行く血流が悪くなり、めまいなどの症状が出ることがあるという。

 さらにこの状態が続くと、小さな血の塊の“血栓”ができる場合がある。そうした時に、首を元の位置に戻し血液が一気に脳へ流れると、血栓が脳の血管を詰まらせてしまい、歩行障害など脳卒中の症状が現れるという。


■美容院側の対策は

 美容師を育てる山野美容芸術短期大学では、首の圧迫に注意するよう生徒に指導しているという。准教授の平田さんはこう話す。

 「長くなってしまう場合は、首の方のクッションを少し厚い物にするであったりとか、お客様とコミュニケーションをとりながら、体調が悪くなった場合は一旦止めて休憩してから再開するとかいうのを指導しています」

 首への負担を減らすための対策をしている美容院もあった。

 東京・吉祥寺にある“Hair Cenote”では、首の負担が少ないというシャンプー台を設置。スタイリストの久保田さんによると、「従来のシャンプー台は、ネックピロー1つだけのものが多いんですけど、こちらのシャンプー台は、ネックピロー1つとヘッドピローの3点で頭と首を支えるかたちになっています」

 ヘッドスパなど長時間使用する場合にも首への負担が少なくて済むそうだ。


■異変を感じたら…

 では、もし美容院で異変を感じたらどうすればいいのだろうか?遠藤さんはこう教えてくれた。

 「(すぐに)姿勢を解除して良くなればそれで大丈夫だと思うんですけど、洗髪が終わって5分以上めまいが続いた場合とか、終わって立ち上がろうとした時にふらつきを感じた場合は、そういったこと(脳卒中)が起こっている可能性もあるので、(病院で)頭を調べてもらった方がいいと思います」

 美容院での洗髪が原因の脳卒中で重症化することはまれだということだが、おかしいと感じたら早めに病院に行くことが大切だということだ。


■普段の生活の中にも

 注意するべき首の動きは普段の生活の中にもあるそうだ。

 例えばパソコンを使用している時、あごを突き出した姿勢で画面を見続けていると、同じように首の血管を圧迫してしまうという。他にも、見上げる体勢での電球の取り替え作業や、映画鑑賞などがある。体質によっても違うが、首の血流が悪くなってから約3分で、めまいや吐き気などの症状が出る人もいるということだ。

 いずれにしても長時間、首を圧迫しないことが大切だということだ。

 意外なところに病気の原因がある。正月休みに旅行に出られる方もいると思うが、観光地で高い所を見上げたりすることも多くなるので注意したい。