日本近海で乱獲 ルール無視の中国船に迫る
夜の海に浮かぶ1隻の船。その正体はルールを無視してサバを乱獲する中国漁船だ。「NEWS ZERO」は取り締まりを行う日本の水産庁の船に密着取材。そこで見た異様な光景とは-。
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北海道沖・公海 9月12日
「距離教えてよ!」
「600メートルです!」
水産庁・漁業取締船の操舵(そうだ)室は、緊迫した空気に包まれていた。海上で、まばゆい光を放ちながら漂う船。舳先(へさき)には、中国国旗がはためいていた。サーチライトが甲板を照らすと、そこには大量の魚が。
水産庁職員「この海域で操業するには許可が必要です!」
中国語の通訳「657の船長、この海域での漁は許可が必要です!」
実は、北太平洋の漁場では、国際的な条約のもと、許可を得た漁船でなければ操業することはできない。しかし、今、その許可を受けずに乱獲する中国漁船が、後を絶たないという。乱獲の対象は、日本でも身近な魚だ。
現場の周辺で水産庁が調査を行うと、次々と釣り上がったのは「サバ」だった。もし乱獲が続けば、将来、資源の枯渇も懸念されているという。
サバの漁場で今、何が起きているのか。出港して3日目の朝-。
日本が独占的に漁ができる排他的経済水域の境界線近く。
漁業取締船・橋本高明船長「まっすぐ船首方向に1隻見えています」
前方に、1隻の中国漁船が現れた。近づくと、漁はしておらず、甲板に人影は見当たらない。
一方、取締船が捉えた映像には-。
船長「犬がいるね…」
おけを持ったまま、こちらを見つめる男性も。中国政府が許可を出している船のリストを確認すると、正規の登録船であることがわかった。しかし、登録のない船も。
船長「こちらが運搬船。漁獲物を転載しているんですね。これについては、リストに載ってない船です」
近づいて確認を行う。
水産庁の取締船「船に何を載せていますか?」
無登録の漁船「サバです」
水産庁の取締船「これからどこに行きますか?」
無登録の漁船「中国です」
水産庁の取締船「(操業の)許可証番号は?」
無登録の漁船「許可証は会社にあります」
船長「向こうの言い分なのでね。これで終わります」
公海上のため、水産庁には立ち入り検査などの権限はない。中国政府側への通報にとどまった。
さらに、もう1隻。この漁船も、許可がおりている船のリストにはなく、呼びかけにも応じなかった。
また、ブリッジの上部に「順風満帆」を意味する四字熟語が書かれたこの船も、無許可の状態。
漁業取締船・橋本高明船長「以前は中国漁船や台湾漁船は見かけなかったんですけどね。近年になって急増しているところはありますね。無秩序化が進んでいくことが懸念されますね」
今回の取り締まりで、水産庁は97隻の中国漁船を確認。そのうち29隻は、国際条約上のルールに違反しているという。
出港から10日目の夜。闇の中に無数の明かりが現れた。漁を開始した漁船の光だ。強い明かりで魚をおびき寄せるこの漁法は、一度に大量の魚を捕ることが可能で、北太平洋における日本の水域では、資源保護の観点から認められていないという。
そのうちの1隻に後ろから近づくと、この船もまた、許可リストにない中国漁船だった。こちらの呼びかけに応じることはなく、ただ黙々と、魚を捕り続けていた。
先月24日に行われた国際会議で、日本は、公海でのサバ漁船の数を増やすことを禁止するよう求めたものの、中国が反発。強制力のない「努力目標」にとどまっている。