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売上10倍も…「機能性表示食品」の選び方

2016年9月21日 20:29
売上10倍も…「機能性表示食品」の選び方

 「特定保健用食品(トクホ)」と「機能性表示食品」は、どちらも健康にいいことをウリにしているが、実際は違う分類のものだ。去年スタートした「機能性表示食品」では、表示することで売り上げが10倍以上になったという商品もある。賢い利用方法を考える。


■企業自らの責任で表示する「機能性表示食品」

 一般の食品は健康効果をうたうことは認められていない。1991年から制度が始まった特定保健用食品「トクホ」は、効果や安全性を国が審査して、消費者庁長官が許可をすることで効果を表示することができる。トクホは、国の許可を得るために企業が、臨床試験を行う必要があり、多額の開発費がかかり、申請から表示するまで数年かかる。

 一方、去年4月からスタートした「機能性表示食品」は、企業が国に届け出るだけで、国の審査はない。企業が国に届け出るだけなので、かかる費用が少なく、表示まで数か月と短い。つまり、国ではなく、企業が自らの責任で健康効果を表示する。


■成長戦略のひとつとして―

 また、トクホには、消費者庁許可というマークが付いているが、機能性表示食品には特定のマークはない。健康効果をうたうには「トクホ」があるのに、なぜ「機能性表示食品」を新たにつくったのだろうか。

 トクホは費用も時間もかかるため、ハードルが高く、表示できるのは事実上、大企業に限られていた。そこで、安倍政権の成長戦略として、費用の負担が小さく、時間もかからない機能性表示食品が導入され、中小企業も参入できるようになった。制度が始まってからの1年半で、431件が受理されるなど、この制度を利用する企業が増えている。


■売り上げが10倍になった商品

 健康効果が書かれていると、商品を選ぶ時の大きなポイントになる。例えば、ある蒸し大豆は元々販売されていたものだが、去年12月から機能性表示食品として「丈夫な骨の維持に役立つ」などと表示を始めた。すると、中身は同じだが、表示する前に比べて売り上げが10倍以上になったという。


■「事業者が売るための制度」との指摘も

 一方で、機能性表示食品の場合は、国の審査がなく、企業の届け出制なので、その内容が信用できる確かなものなのかという不安の声も上がっている。20日、消費者問題を話し合う内閣府の有識者の委員会が開かれた。この中で、機能性表示食品について、企業が提出したデータの根拠が不十分のケースや、表示されている成分量が実際に含まれている量と異なるケースが報告された。これについて、委員からは「消費者にとって、分かりやすい表示を担保できるのか」「制度そのものの信頼が崩れれば意味がない」などの厳しい意見が相次いだ。

 これについて、国立健康・栄養研究所の梅垣情報センター長は「企業が届け出た内容をチェックするシステムが必要。産業振興になった良い面もあるが本来、消費者のための制度のはずだが、事業者が売るための制度になっている」と指摘する。


■賢く利用する

 そうした時のために私たちが参考にできるサイトもある。例えば、「キノウノミカタ」というサイトでは、100人以上の管理栄養士らが商品を実際に食べて、レビューをのせている。集計結果が点数化されていて5点満点でつけられている。

 また、「消費者市民社会をつくる会」のホームページでは、専門家が商品を3段階で評価している。企業が提出した資料と見解が異なる場合は「見解不一致」とし、企業とのやり取りも公開されている。

 今回のポイントは「賢く利用」。トクホや機能性表示食品などで、健康効果が分かりやすく示されるのは私たちにとってありがたいことだ。しかし、使い方を間違えると、効果が出ないこともあり、そればかりを食べていても健康になるというものではない。あくまでも私たちに合った食品を選ぶ1つの目安として、賢く生活に取り入れたいものだ。