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“廃墟モール”にタマネギ無人販売…なぜ?

2016年9月16日 19:58
“廃墟モール”にタマネギ無人販売…なぜ?

 店舗が撤退している大型ショッピングモールの一角で、タマネギの無人販売だけが行われている画像が、まるで“廃墟モール”だと話題になっている。取材してみると、意外な事実がわかってきた。


■ツイッターに投稿された画像には―

 奥行きのある無人の空間、看板には「野菜」や「果物」と書かれている。そして、写真の中心をよく見るとぽつんと何かが置かれている。それは、カゴに乗った十数個のタマネギ。代金を入れる箱も置かれている。わざわざ見に来る人も―

 「なんかもう廃墟って感じがすごかった」

 ツイッターでも画像の投稿直後につぶやきが急増。「玉ねぎ専用モール」「こ、これは怖い」「逆に玉ねぎ買いに行きたくなる」など、1週間で800件以上の書き込みがあった。


■現地へ行ってみると―

 岐阜・本巣市にあるこの施設「LCワールド本巣」は、1992年に開業し、2011年には本館別館あわせて、100店舗以上が入居。年間約400万人が訪れていたという。ところが、本館からはこの5年間で店舗が次々と撤退。唯一残っていた食料品店も今年4月に通常営業を終了した。しかし、オーナーとの契約は残っていたため、常温でも日持ちするタマネギを無人で売り、無くなったら補充しているという。

 実際に現地を訪ねてみると、駐車場は閑散、窓には白い幕がかかり人の気配は感じられない。そんな中、1台の車が駐車場にやってきた。人がモールの中に入っていくようだ。数分後、出てきた女性に話を聞いてみると―

 「タマネギが売ってるって(という情報見て)そうだ!タマネギ買いに行こうと思って」「(Q:タマネギはありました?)タマネギはありません」

 別の男性に店内の写真を見せてもらうと、カゴの中は空っぽ。話題になったことで、訪れる人が増えたのだろうか。タマネギは売り切れていた。


■なぜ“廃墟モール”になったのか

 近所の人「モレラ(別のショッピングモール)ができてから、ここがどんどんお店がなくなっていった」

 その理由は、5キロほど離れた場所に、2012年にリニューアルオープンした別のショッピングモールにあるという。車を走らせること約15分、「モレラ岐阜」の駐車場には平日にもかかわらずたくさんの車があった。約1時間観察したが、車の出入りが途切れることはなかった。こうした状況について、消費動向に詳しいニッセイ基礎研究所・久我尚子さんは―

 「市場全体が飽和して、今ある別のモールからお客様を奪うという構図にどうしてもなってしまうので」

 小売市場の販売額は1996年をピークに減少に転じ、近年は横ばい状態。モノへの消費額が減る中で、同じ地域にショッピングモールが乱立し、客の奪い合いが起きている。


■復活できたショッピングモールもある

 こうした中、客足を戻したショッピングモールもある。「カラフルタウン岐阜」は、開業当初は順調だったが、周囲に競合店ができた結果、2008年には、来場客数が約2割減少。活気を失っていたという。

 カラフルタウン岐阜・プレジデント仁科さん「お客様に聞きながらなんとか復活しようという思いで数年間過ごしました」

 取り組んだのは、顧客への徹底的な聞き取り。そして誕生したのが、売り場を減らして確保した「広いベビールーム」だ。

 訪れた人「(以前は)子供と一緒に来るっていうイメージがあんまりなかったんですけど、遊ぶところとかも増えて」

 また、以前は暗くて評判が悪かったという子ども用のトイレもユニークなものに改装。ここでトイレデビューする子どももいるほど人気だという。子供連れの客が増え、去年は最盛期に迫る約790万人が来場した。


■画一的な“集客アイデア”では限界も

 このショッピングモールは、特に子育て世帯のニーズに合わせて復活させていたが、専門家の久我さんによると、今、日本の消費の約4割は高齢者がしめていて、高齢化・人口減少が、業界全体を厳しいものにしていると分析している。

 そうした中で、高齢者のニーズに合わせた戦略もひとつの方法という。例えば、ショッピングモールに、クリニックや薬局など医療関係の店舗を充実させる。また、今増えてきているネットショッピングや宅配サービスに対抗するため、あえて、コンシェルジュなどをおいて対面サービスを行うなど、ニーズに合わせて、差別化を図ることも重要だという。