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「財政出動」各国の温度差うめられず

2016年5月28日 2:00
「財政出動」各国の温度差うめられず

 伊勢志摩サミットが27日に閉幕した。世界経済の現状認識や政府の支出で需要を増やす「財政出動」については、各国間の温度差を埋められなかった。

 安倍首相は会見で、世界経済が危機に陥るリスクに直面しているとの認識をG7で共有したと強調した。

 安倍首相「世界経済が通常の景気循環をこえて、危機に陥る大きなリスクに直面している。私たちG7はその認識を共有し、強い危機感を共有しました」

 しかし、首脳宣言は、世界経済について「下方リスクが高まってきている」との表現にとどまった。また、焦点となっていた財政出動にどこまで力を入れるかについては、「財政戦略を機動的に実施し、取り組みを強化する」ことで合意したが、「財政出動」という文言は盛り込まれなかった。

 安倍首相は、新興国の経済がリーマンショック並みに厳しいという資料を配って異例の説得を試みたほど、世界経済への危機感の共有には相当こだわった。しかし、イギリスのキャメロン首相が「危機感を煽(あお)るのは良くない」と発言するなど、認識は共有できず、安倍首相のこだわりは、いわば空回りした格好となった。

 こだわった理由は、年明けから国内の消費が低迷していることなどから、安倍首相が来年4月の消費税率引き上げの見送りを検討していたからだ。

 見送りにあたって、世界経済が厳しいという認識は、アベノミクスの失敗という批判への反論になるし、消費増税の取りやめを後押しすることになる。

 安倍首相「今回のG7合意に従い、率先して世界経済の成長に貢献する。消費税率引き上げの是非も含めて検討し、夏の参議院選挙の前に明らかにしたいと考えています」

 安倍首相は、国会会期末の来月1日までに、正式に引き上げ見送りを表明するものとみられる。