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15年度与党税制改正大綱 ポイントは?

2015年1月4日 17:54

 2015年度の与党税制改正大綱が去年12月30日に取りまとめられた。今回の大綱では安倍政権の進めるデフレ脱却と経済の好循環実現、地方創生を後押しする税制改正が目立った。

 目玉は法人税の実効税率の引き下げだ。日本企業の国際競争力を高めるため、法人税の実効税率は現在の標準税率34.62%から2年間で3.29%引き下げ、31.33%とすることが決まった。具体的には2015年度に2.51%、2016年度に0.78%引き下げる。さらに、次の税制改正で課税ベースの拡大等により財源を確保して、2016年度の税率引き下げ幅をさらに上乗せするとしている。一方で、税率の引き下げによる減収分を埋め合わせるため、赤字企業でも事業規模に応じて課税する「外形標準課税」を2年間で現在の2倍に強化する。ただし、一定の賃上げをした企業には控除できるようにした。法人税の実効税率引き下げを巡る議論では、財政再建への影響を抑えるために財源の確保が焦点となっていた。しかし、これは時間をかけてやることが確認され、結局、減税を先行させる形で決着している。

 大綱では、企業支援の他に個人消費の喚起や地方への配慮にも重点が置かれている。軽自動車を2015年4月以降に購入した場合の税金が現在の7200円から1万800円と約1.5倍になることから、軽自動車にも環境性能に応じてエコカー減税を導入することになった。2020年度の燃費基準を達成すれば25%の減税、基準よりも20%以上、上回れば50%の減税とし、電気自動車の場合は75%の減税とする。

 この他、高齢者の個人資産を子や孫へ移転させ、個人消費を活性化させるための税制改正も行われた。親や祖父母から住宅購入資金の贈与を受けた場合の贈与税については、現在1000万円の非課税枠を2015年度から1500万円に拡大し、さらに2016年10月からの1年間は2017年4月の消費税率10%への引き上げを考慮して、非課税枠を3000万円に拡大する。また、結婚・子育て資金を子や孫に一括贈与する場合、1000万円の非課税枠を新設する。

 地方創生では、自分の故郷などに寄付することで税金の控除を受けられる「ふるさと納税制度」について、全額控除を受けられる寄付金額の上限を現在の倍にする。これにより、地方自治体の収入を増やしたい考えだ。また、政府が進める東京一極集中を是正するための取り組みも税制で後押しする。東京などに本社がある企業の地方移転を促すため、建物や土地の取得など移転にかかる費用の7%を法人税から減税できるようにする。移転に伴い地方の拠点に従業員を増やした場合、移転の年から4年間、社員1人あたり最大140万円まで法人税を減税できる措置も導入する。地方から東京などへの人口流出に歯止めをかけ、若い世代が安心して働ける雇用の場を増やすことを目指す。

 消費税率10%への引き上げは2017年4月まで先送りすることが明記された。食料品など消費税の軽減税率制度を巡る議論は、「2017年度からの導入を目指す」として、与党公約が踏襲された。軽減税率を巡っては対象品目、区分経理、安定財源などについて、1月下旬に与党内で制度設計に向けた議論が始まる。今回は経済の好循環を目指す税制改正に重点が置かれた一方、安倍首相が2014年3月に関係閣僚に指示した所得税の配偶者控除の見直しに象徴される「働き方の選択に中立な税制のあり方」についての結論は見送り、議論が継続されることになった。

 現在の税制は配偶者控除が創設から50年あまり経過していることが象徴するように社会構造の変化に対応し切れていない部分が見られ、大きな見直しが迫られている。2015年、政府税制調査会は家族のあり方や役割に税制が関与するべきかといった根本的な考え方も含めた議論を経て、早ければ2016年度税制改正に向けて結論を取りまとめる見通しだ。