×

激減のハズが一転“豊漁” 謎多きウナギ

2014年7月25日 3:36
激減のハズが一転“豊漁” 謎多きウナギ

 29日は土用の丑(うし)の日。ウナギは去年、数が減ってしまったのではないかと心配されていた。今年は一転、「豊漁」が伝えられているが、ウナギ店の悩みは尽きないようだ。なぜなのか。

 取材班は24日朝、東京・港区のウナギ料理店「鳥かど家」を訪れた。土用の丑の日を29日に控え、徐々に忙しさが増してきたという。この店で取り扱っているのは、国産の養殖ウナギ。ここ数年、高値が続いていたというが…。

 鈴木徹雄店長「(仕入れ値は)キロあたりで700~800円くらいには下がっている。いつも土用の頃は値段が上がってくるんですけど、今年はあまりそういう傾向がない。値段はそのままで、(ウナギの)大きさ的に大きめのを入れて、お客様に喜んでいただこうと思っています」

 価格が下がったワケは、ウナギの稚魚が豊漁だったこと。ウナギの養殖は、毎年11月から翌年の5月頃にかけて捕獲した天然のウナギの稚魚「シラスウナギ」を育てる。国内でのシラスウナギの漁獲量はここ数年、特に少なく、輸入もあわせた取引価格は大幅に上がっていた。しかし、今シーズンは漁獲量が3倍以上に増え、取引価格も半分以下にまで下がったのだ。

 養殖ウナギの生産量が日本一の鹿児島県。養殖場を訪ねると、ビニールで覆われた池がずらりと並んでいた。養殖ウナギはこうした池で、約半年かけて育てられる。今年、池に入れたシラスウナギは約65万匹。去年の4倍以上に増えたという。

 いまむら養殖・今村寛信社長「うれしいですよ。息ができる。養鰻(ようまん)業者に去年まで入る量が少なかったですから大変だった。やっと息ができるかな」

 今年の豊漁に安堵(あんど)する一方、今後について聞くとこんな本音も…。

 今村社長「たくさん捕れなくても、ある程度の水準でずっと捕れている。少ないんじゃなくて、ある程度の水準で捕れてくれればいいと思う」

 シラスウナギの漁獲量は、1963年には232トンあった。しかし、乱獲などを理由に激減した。また、ウナギの生態は謎が多く、今年、豊漁となった理由も明確にはなっていない。こうした中、ウナギを減らさず安定的に供給できるよう、その生態を調査しようという取り組みも行われている。

 鹿児島県の枕崎市の花渡川では、九州大学の研究者や鹿児島県の職員らが、ウナギ保全のための調査を行っている。

 九州大学・望岡典隆准教授「(Qこれって何ですか)これ、『石倉かご』ですね」

 石倉かごとは、川の中に石を積んで、かごで囲ったもの。ウナギは石の隙間をすみかとして集まってくるという。石倉かごを使ってウナギを定期的に捕獲し、その生態を調査するのが狙いで、鹿児島県も2012年から対策協議会を立ち上げ、取り組みを後押ししている。

 かごの中の石を移し替え、網を岸にあげてみると、40匹近い天然のニホンウナギが捕れていた。捕れたウナギは、長さや重さ、胴回りを測り、次回の調査でも識別できるようにマーキングをする。そして、調査が終わると川へと戻される。

 望岡准教授「ウナギがどの程度移動するのかとか、それが発育期ごとに小型個体、大型個体でどういうふうに違うのかということも明らかにしていくということですね」

 また、政府も、シラスウナギの乱獲防止のため、新たにウナギの養殖業者に届け出制を導入する方針。年内にも政令で決定し、将来的には許可制にしたい考えだ。

 日本人にとってなじみ深い食材、ウナギ。安定的な供給を取り戻すため、対策が急がれる。