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旧熊本医大、ハンセン病患者の骨格標本作成

2013年5月11日 21:04
旧熊本医大、ハンセン病患者の骨格標本作成

 昭和初期、熊本大学医学部の前身である旧熊本医科大学で、ハンセン病療養所に入所している患者の遺体を解剖し、骨格標本を作っていたことが分かった。当時の教授らが行った行為に、専門家から批判の声も上がっている。

 9日に会見した熊本大学医学部によると、昭和初期の1920年代、当時の熊本医科大学の鈴江懐教授ら数人が、現在の熊本県合志市にあった九州療養所に入所していたハンセン病患者の骨格標本を作って保管していたという。ハンセン病患者の標本作製に大学が関わっていたことが分かったのは初めて。

 熊本大学が学内に残っていた資料を調べたところ、ハンセン病患者だけの解剖者名簿には、1927年から2年間に患者の遺体43体が解剖され、このうち20体の骨格標本が作られたと記されているという。標本は戦争中の空襲で消失したとみられ、残っていない。

 鈴江教授は戦後発表した論文の中で、「この貴重なコレクションは、当時熊本大学を訪れる医学界の名士に鼻高々と供覧誇示した」と書いていた。

 熊本大学医学部・竹屋元裕医学部長は会見で、「新しい発見をすることは、医学界で大きく認められたりする。鈴江先生の立場では、骨格標本の研究に自信を持っていたのではないか」と述べた。

 一方、合志市にある国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の入所者で作る「恵楓園入所者自治会」は、当時、九州療養所から遺体が提供されたことを裏付ける文書やカルテなどを早急に調査し、結果を自治会に報告するよう要請した。

 自治会の志村会長代行は「ハンセン病に対しての倫理が、解剖した人にはなかったのか」「真相を明らかにすることをやっていただきたい」と訴えた。

 ハンセン病問題に詳しい専門家からは、倫理上、重大な問題と批判する声も上がっている。熊本学園大学の遠藤隆久教授は「療養所と大学が入所者の遺体を融通しあっていたという、癒着した関係は非常に重い」と指摘している。

 熊本大学は今後、大学に残る解剖名簿と恵楓園側の記録を照合し、人権上の問題も含めて調査する方針。

 全国のハンセン病療養所を所管する厚生労働省の田村大臣は10日、この問題について「事実なら大変申し訳ない話だ」と述べた。