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原発キーワード「五重の壁」

2011年4月16日 2:26
原発キーワード「五重の壁」

 原子力発電所に関する報道、水や食物などへの影響に関する報道の中で、わかりにくい言葉や気になる情報を毎回1つピックアップし、日本テレビ報道局の担当記者が解説する「原発キーワード」。15日は、「五重の壁」について原発事故取材班・石川真史デスクが解説する。

 原子力発電所には、放射性物質を閉じ込めるための防御策として「五重の壁」というものがある。本物の壁が5重になっているというわけではなく、「5種類の工夫がある」という意味。

 1つ目は「ペレット」。原発では、燃料としてウランを核分裂させ、熱を発生させて発電するが、そのウランを閉じ込めているのがペレットという粒。大きさは直径1センチ、高さ1センチくらいで、陶磁器のように焼き固めてあって、約2700℃になるまで溶けない。

 2つ目は「燃料棒」。ジルカロイという丈夫な合金でできた長さ約4メートルの管で、ペレットを覆っている。

 3つ目は、原子炉の圧力容器。厚さ約15センチの鋼鉄製。発電のための蒸気を作るところなので、90気圧という高い圧力にも耐えられるようになっている。

 4つ目は、原子炉の格納容器。圧力容器の外側にあり、厚さ3センチの鋼鉄製。

 5つ目は、原子炉建屋。格納容器を取り囲んでおり、厚さ約2メートルのコンクリートの壁でできている。

 一見、万全に見える「五重の壁」だが、今回の福島第一原発の事故では、大量の放射性物質が外に漏れ出してしまった。ペレットと燃料棒は、1~3号機の全てで閉じ込め機能が失われたとみられる。また、格納容器と原子炉建屋は、1~3号機で損傷した可能性がある。圧力容器は、1~3号機のいずれでも損傷はないとみられているが、圧力容器につながるパイプに損傷があり、放射性物質が漏れている可能性がある。

 このように「五重の壁」が損傷した今、放射性物質の拡散を防ぐには、まず、残っている圧力容器が壊れないようにすることが重要である。そのため、熱で損傷しないように、圧力容器に水を入れて冷やす作業が続いている。また、1号機では、格納容器に窒素を入れて、建屋を吹き飛ばした水素爆発が起きないようにしようとしている。当面は、このように今ある“壁”を守りながら、次の手を考えていくことになる。