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食卓に影響が… 「のり」半世紀ぶりの不作

2019年4月5日 18:10

ニッポンの食卓に欠かせない「のり」。そののりが、全国的におよそ半世紀ぶりの不作に陥っている。

その原因は何か? おにぎりやおすしなど、私たちの食卓にも影響が広がり始めている。

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その価格や種類の豊富さで人気の回転ずし。シャリやネタとともに大事にしているというのが、軍艦巻きや細巻きにはなくてはならない「のり」。

京樽商品部長・深川俊一郎さん「のりは本当になくてはならない」

九州・有明海産の「のり」を仕入れているという回転ずしチェーンでは、今年、仕入価格が上昇したという。

京樽商品部長・深川俊一郎さん「生産量が減って、相場が徐々に高騰していまして」

ただ、販売価格は据え置きのまま。

京樽商品部長・深川俊一郎さん「とてもつらいことですよね。のりはすし屋にとっては命ですから」

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さいたま市にある工場で作られている私たちの定番食品にとっても「のり」は命。

製造ラインから次々と流れてきたおにぎり。1日におよそ7000個が作られ、そのほとんどがスーパーに出荷されているという。

アグリフーズ・中埜智之社長「のりは佐賀県産、有明ののりを使用しています」

この会社でも、のりの仕入価格が上昇。去年は15%、そして今年は7%と、この2年で20%以上も上がったという。そのため、値上げに踏みきりたいものの、できないワケがあった。

アグリフーズ・中埜智之社長「おにぎりってだいたい値段が決まっているんですよ。のりが高いので値上げしたいって申し上げても、認知されている値段なので難しいところがある」

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日本の食卓には欠かせない「のり」の高騰。その原因は、“半世紀ぶり”となる全国的な不作によるもの。

そもそも国産のりの収穫時期は11月から4月にかけて。中でも一大産地として有名なのが、九州の有明海で、佐賀や福岡など4県で全国のおよそ半分の生産量を占めている。

しかし、佐賀県の漁業協同組合などによると、その有明海では今シーズン、例年よりプランクトンが多く発生。のりとプランクトンは栄養源が一緒のため、のりが栄養不足となり、生産量が減ったという。

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そして、関東の産地では違う理由で不作になっている。

千葉県木更津市では、「のり」の収穫が終盤を迎えている。

のり漁師こなや・齊藤正臣さん「(今シーズン)枚数的には、若干少ないかなってくらい。秋口にとれないっていうのが一番痛かった」

その理由は魚。

のり漁師こなや・齊藤正臣さん「魚の食害って言われていて、年々ひどくなっています」

雑食だというクロダイがのりを食べているという。

「のり」の網の下には、魚よけ防御ネットをはっているが、そのネットがないところでは「のり」が極端に少なくなっている。

のり漁師こなや・齊藤正臣さん「ずっと準備をしてきて手間暇かけて育ててきて、さぁっていう時に食べられちゃうのはつらいよね。不作不作って言われてるんだけど、(食害対策の)いろいろな知恵を出しあって、漁師仲間で連携してやっていくしかない」

千葉県漁業協同組合連合会によると、食害の他に海水温が高かったことなどもあり、今シーズンの収穫量は、例年の半分ほどになる見込みだという。

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全国の「のり」の生産枚数は、ピークだった2001年度から徐々に減少傾向で、今シーズンは特に少なく、62~63億枚となる見込みに。これは1972年度のおよそ61億枚に並ぶ数で、実に46年ぶりの不作となる。

その影響は私たちの食卓にも及びそうだ。のりメーカー「白子のり」は、今年6月1日から、のり製品の価格改定を発表。「姿焼10枚入り」が450円から475円になるなど、のり製品全般で希望小売価格が最大8%値上げされるという。

今後の「のり」の価格について海苔産業情報センターは、しばらくは、高値傾向が続くとしている。