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勃発から67年…米国で“忘れられた戦争”

2017年7月14日 16:29
勃発から67年…米国で“忘れられた戦争”

 アメリカで「忘れられた戦争」とも呼ばれる朝鮮戦争の勃発から先月で67年を迎えた。トランプ大統領が北朝鮮への圧力を一段と強める中、朝鮮戦争を戦った元兵士からは戦争の再開を恐れる声が出始めている。

 「北朝鮮の姿勢は恥ずべきもので、極めて危険なやり方をしている。何かをしなくてはいけない」―先週、G20首脳会議のためヨーロッパを訪問したトランプ大統領。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行った北朝鮮に対し、いらだちを強め、武力行使の可能性を否定しなかった。

 こうした中、緊迫する北朝鮮情勢に恐怖を抱いている人たちもいる。かつての朝鮮戦争を戦ったアメリカの元兵士たちだ。

 朝鮮戦争の開戦から67年を迎えた先月、アメリカ各地で犠牲者を追悼する式典が営まれた。マーティン・サリバンさん(83)は17歳で海兵隊に入り、戦地となった北朝鮮に赴いた。

 サリバンさん「朝鮮戦争は本当に無駄だった。(アメリカ兵だけで)3万8000人が死亡したが、戦争で得られたものは何もなかった」

 1950年6月に勃発した朝鮮戦争。旧ソ連などが支援する北朝鮮軍と、アメリカなど国連軍が支援する韓国軍との戦いへと発展、「休戦協定」が結ばれるまでの3年間で計数百万人が犠牲となった。

 サリバンさん「ワシントンの政治家は『戦争』とは捉えていなかった。戦争だと言われはじめたのは、数年前からです。だから、(自身がかぶっている)この帽子にも『忘れられた戦争』と書かれている」

 ところが、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返し、緊張状態が高まっている今、「また戦争になるのではないか」との懸念が広がっている。

 アメリカに駐在する韓国軍幹部のチャン・グン・リー氏「朝鮮戦争は、まだ終わっていない。北朝鮮は脅迫を続けている」

 サリバンさん「朝鮮戦争が再開することが怖い。私が生きている間に朝鮮戦争が再開しないことを願っています。戦争と隣り合わせに生きるのは懲り懲りだ」

 朝鮮戦争では、サリバンさんの仲間のアメリカ兵のうち8000人近くの行方がいまだ分からないままだ。

 遺族も高齢化する中、朝鮮半島で収集された大量の遺骨から身元を特定する作業が今も続けられている。土で覆われた骨を1つ1つ洗浄し、遺族から提供された唾液などのDNAと照らし合わせる地道な作業だ。

 アメリカ軍DNA鑑定研究所のティモシー・マクマホン博士「骨を洗い、粉々にしてインキュベーターで加熱し、一晩をかけて全てのDNAを抽出させます。全ての過程を2回行うため、55日ほどかかります」

 DNA鑑定の技術の発達とともに、遺族が提供したDNAが遺骨と一致する確率は94%にまで高まり、今では1か月に数人の身元が判明、遺骨は軍から遺族の元へと返される。

 朝鮮戦争で兄を失ったリチャード・ファーマーさん(85)「美しい式で涙があふれた。自分の手で兄を棺(ひつぎ)に入れてあげたかったので、達成できて幸せ。私たちが期待していたように、兄は(生きて)帰ってこなかったが…」

 終戦ではなく「休戦」の協定を結んでから今月で64年を迎える朝鮮戦争。

 「苦い記憶を繰り返すべきではない」

 朝鮮戦争を体験した元兵士たちの切実な願いだ。