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米大使館“エルサレム移転”発言が火種に

2017年3月18日 21:17

 アメリカのトランプ大統領が選挙前に掲げた極端な公約をどこまで実行に移すのかが注目されているが、その1つが、中東・イスラエルにまつわる政策。現地で広がる「不安」を取材した。

 イスラエル最大の商業都市テルアビブ。実は今、このアメリカ大使館が、中東地域をさらに不安定化させかねない「火種」となっている。

 その理由は、トランプ大統領の「我々はアメリカ大使館をユダヤ人の永遠の首都であるエルサレムに移す」という発言。

 エルサレムはユダヤ教、イスラム教、キリスト教と、3つの宗教の聖地。ユダヤ人国家のイスラエルは、エルサレムを「首都」と主張している。しかしイスラエルと対立するパレスチナ側も、将来の独立国家の首都と主張。その帰属をめぐって争っている。

 こうしたことから日本をはじめ各国は、エルサレムを避けて、テルアビブに大使館を置いているにもかかわらず、トランプ大統領は大使館を移転するのか。今年1月の就任式当日、パレスチナ自治区では、抗議デモが多発しヨルダン川西岸でも行われた。

 デモ参加者「アメリカ大使館の移転は、越えてはいけない一線だ。パレスチナを爆発させることになる」

 抗議行動はエスカレートしていった。大使館移転を強行すれば、パレスチナはもちろん、周辺のアラブ諸国をも刺激し、一触即発の事態となることは必至。

 トランプ大統領が「イスラエル寄り」だと指摘されているのは、イバンカさんの夫、クシュナー上級顧問をはじめ、ユダヤ教徒が政権内で要職についていることも影響している。

 そんなトランプ政権の姿勢を見越してか、イスラエルはある政策を推し進めるようとしている。イスラエルは今ヨルダン川西岸で、パレスチナ自治区と入り乱れるように点在する入植地をさらに拡大しようとしている。

 入植地と隣り合う地域に住む、パレスチナ人のフセインさん(53)。2015年に家が放火され、娘夫婦を亡くした。フセインさんは、パレスチナ人の存在を嫌う入植者による犯行だと話す。当時5歳だった孫のアハマドくんは助け出されたが、全身の70%にヤケドを負っていた。

 フセインさん「トランプ大統領が(イスラエルに肩入れして)さらにパレスチナを抑えつければ、パレスチナは爆発するでしょう」

 トランプ大統領自身は就任後、イスラエル側に入植地の拡大方針をやわらげるよう求めている。また、大使館のエルサレム移転についても、具体的な計画は示していない。今後の政策に幅をもたせるトランプ大統領らしい戦略とみられる。

 これまで中東和平の仲介者としての役割を果たしてきたアメリカが、どのような方向性を示すのか。国際社会はトランプ大統領の次の一手を見守っている。